8/16 (日) 22:00 口裏合わせ

「いっそのこと、僕が紹介すればよかったんじゃないかな?」

「何言ってるんだ、お前が出て行ってどうする」

「でも、そうじゃないと逆に話がややこしくなるんじゃないのか?下手に隠そうとするから難しくなるんだよ、真実を話してしまえば、もうこの件はお終いでしょ」

「そんなに簡単に言うなよ。今まで、こんなことになることも予測して、対応策を練ってきたじゃないか。その苦労が水の泡だぞ」

「確かに、沢渡くんが加藤に連れてきてもらったと言った以上、話をつなげないといけないよね」

昨夜から、殿下と結城さんが話し合いをされている。幸い今は夏休み中なので、帰ったところで部活以外のメンバーには会わないにしても、飛行機が着くまでには方針を固めなければならない。その一方で、沢渡さんは青い顔でうつむかれている。・・・殿下と結城さんの間には割り込めないという気持ちはよく分かる。

「別に沢渡くんが悪いわけではないのだから、君は堂々としていなさい。余計に怪しまれてしまうよ」

「はい・・・」

問題は、園田さんがどのくらい触れ回るのかということだ。彼が黙っていてくれれば問題はない。しかしそんなわけにはいかないだろう・・・。

「その園田っていう男に何か弱みはないのか?その弱みを握る代わりに、黙っていてもらえないのか」

「だったら逆に、僕の姿を見ていなかったら何の問題もないんじゃないの?彼のように休みを利用して外国に旅行に出かける人はたくさんいる。旅行で通しておけばいいんじゃないの?」

「それなら加藤はなんだ?・・・そうだ、沢渡の家庭教師ということにしておくか」

「いいんじゃない?それは。だったら、仮に宮殿に来ていることがバレたとしても、加藤は宮殿に住んでいるからということにしておけばいいよね」

「王宮に関する情報を操作するのは、簡単だからな」

結城さんがニヤリと笑われる。・・・私などでは役不足な気がいたしますが。

「だって、一般の人はまさか、高校生が政官コースにいる、ましてや次期皇太子だなんて思わないでしょう。だから、もしバレたら、王宮で教育を受けているということにしておきなさい。少なくとも、武術を加藤から学んでいることは確かでしょ?」

はい、そうですね・・・。

「なら、一件落着。沢渡くん、王宮の名に恥じないような行動をよろしくね」

殿下は楽しそうに微笑まれた。

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