相変わらず、上柳さんからは何も言ってこない。園田先輩から話が行っていないわけではないと思うのだけど・・・、彼女の僕に対する態度は特に変わっていない。それとも先輩が話していないのかな?だとしたら、先輩は何かを企んでいるのか・・・?
開き直ってみると、何もかも怖くなくなってきた。それは兼古先輩にまず話してみたことで安心したからなのかな?あとは、同じように言うだけだ。
「沢渡、ちょっと来てくれ」
・・・今日は部長だ。この一週間でまだ様子見の段階だけどいくつかのパターンを演じてみた、それを気に入ってくれたのかどうか?
「宮殿で学んでいるというのは本当なのか?」
・・・そっちの話ですか。
「それは正確ではありません。宮殿にいる先生に学んでいるだけです」
「でも、宮殿には君の部屋があるんだろ?」
「指導が遅くなったときには、泊めていただいています」
「でも殿下と知り合いなんだろ?」
え?
「親しそうに話していたじゃないか」
・・・どこで見られたんだろう。清水先輩も来ていたという劇場かな?
「それはたまたま話しかけていただいただけです」
「そんなに何度も?」
・・・この人は何を知ってるんだ?余裕の表情は崩れない。
「それなら話を戻そう。君は宮殿で何を学んでいるんだ?」
「一般教養と、外国語と武術です」
「王宮って、そんな個人レッスンをしてもらえるのかい?」
「ですから、僕は王宮で学ばせていただいているわけではなくて、王宮に所属している先生から学んでいるだけです」
「ふ~ん。でも王宮では、偉くならないと色のついたピアスをしてはいけないんじゃないのかい?」
え・・・。どうしてそんなことを知っているんですか・・・。探らせていたのはやっぱり部長だったんですね。