H-K Timeというのは政府の広報番組で、毎月最終日曜日に放送されている。もともとは短くて、本当に必要な情報だけを流していたのだけど、僕が司会を務めるようになってからは視聴率が伸びたので、町の催し物の模様をレポートしたり、国民の代表と話し合いをしたりと、いろいろな企画をするようになった。今月は、議会で可決された法案について解説をしたり、夏の風物詩を紹介したりすることになっている。そして折角なので、沢渡くんを収録に連れて行くことにした。彼にもいずれ出てもらうことになるだろうから。
テレビ局には知り合いの方がいろいろいらっしゃるので、挨拶をしながら楽屋に行く。その時に、相手の人が、口には出さないけれど沢渡くんのほうをチラチラ見ているのが分かる。・・・これはいい傾向だ。しかし・・・中には困ってしまう人もいる。
「あら殿下、ご無沙汰しております。今日も素敵でいらっしゃいますこと」
何故か、側近たちもうまく引き止められない人がいる。・・・世間にオカマキャラで売り出している、マコトさんだ。
「ありがとうございます。しかし、いつもご自分を磨いていらっしゃるところは、僕のほうが見習わなければなりませんね」
「何をおっしゃいますか。殿下からは品のよさがにじみ出ておりますわ。それは私がいくら身につけようとしても身につかないものです。・・・あら」
彼女(彼?)の視線が、沢渡くんをとらえた。
「そちらの素敵な方を紹介していただけませんの?」
この人の手にかかっては、常識など通用しない。・・・大きな身体で頭上から見下ろされると、威圧感で押しつぶされそうになる。
「彼はまだ研修中ですので、いずれまた、紹介させていただきます」
「それは、仕事ではということですよね?」
そして声を潜めて、
「個人的に紹介してくださいませんの?」
また、そんなことを・・・。
「僕はたしなみ深い女性が好きです。その時が来たら、正式に紹介させていただきます」
殿下は厳しいわ・・・、との言葉を残して、彼女は去っていった。全くもう。・・・でも、隣で沢渡くんが目をぱちくりさせていたのが面白かったので、許してあげることにする。・・・頑張れ沢渡くん。