とある食事会に、僕は出席することになった。今日のはさほど気を遣わなくていいので、僕としてもリラックスの場として活用させていただくことにする。
・・・大きな声では言えないが、女優として活躍している智加さんはとても美しい。女優としてのプロ意識が高く、また、自分の価値をよくご存知だ。
「殿下には彼女がいらっしゃるんですよね」
「はい」
・・・そして、この前提を踏まえた上で話してくださるから楽だ。
「智加さんには彼氏がいらっしゃるんですか?」
「殿下には隠せませんね。・・・私にも彼氏はいます。でも、私が女優を辞めてしまったら、きっと別れてしまうと思います」
智加さんの持論は、女優として仕事が出来る間はそれに専念する。年齢的な衰えが来たら迷わず退いて、普通の人として第二の人生を送る。それまでは女優らしく、生活感を出さないような生活を続けるのだそう。
「でも僕は、もっといろんな智加さんを拝見したいです」
「例えば、主婦をしている私とか?」
「それはかなり意外性がありますね」
「結局、男の人ってそういうのに弱いのかしら?」
「そうではなくて、女優というのはいかにいろいろな役を演じられるか、というところに評価が下されるわけですよね。もちろん夢を与えてくれるのも大事ですけど、そうすると役が限られてしまいます。・・・僕はもっと長い目で、智加さんを見ていきたいのです」
それはどうかしらね?と彼女は考えている様子だった。
「それって、殿下が私にプロポーズしてくださったみたいね」
「女優としての智加さんにね」
また殿下ったら、と彼女は笑う。
「でもそれは、私を見込んでのことですよね?・・・これから仕事を選ぶときには今のご意見を思い出すことにします。ファンの要望に応えるのも女優の務めですからね」
あくまでも個人的な意見ですけどね。