8/30 (日) 21:30 ワナ

「ねえ、僕の神経は図太いのかな?」

彼女の部屋に行くと仕事がたまっているとのことだったので、僕はソファーに横になって本を読んでいた。

「貴くんが図太かったら、私はもっと図太いことになるわ。だって、皇太子殿下そっちのけで、自分の仕事を片付けているんだから」

「それはお互い様だよ。来年からは僕の仕事に付き合わせることになるんだから、今は自分のことをしてて」

「そう言ってくれるのなら、貴くんは図太いんじゃなくて寛容なのよ」

彼女は椅子を回して、僕のほうを振り返った。

「ただし、いい意味でも、悪い意味でも」

「悪い意味とは?」

「・・・時々、私を放ったらかしにしているところ」

それを言われたら、立つ瀬がなくなってしまう。

「違う違う、物理的にという意味じゃないのよ。そうなると、今の私も放ったらかしにしていることになるじゃない。そうじゃなくて、同僚から『彼氏いないの?』なんて聞かれたときに、うまく答えさせてくれないこと。そのために私が飲み会に連れて行かれることもあるのに、貴くんは気にしていないこと」

そうか・・・、同僚のことまでは知らないな・・・。かと言って、挨拶に行くなんてことになると、それはそれで迷惑になるかもしれない・・・。どうしたらいいんだ?とりあえず起き上がって、彼女を見る。

「舞は僕にどうしてほしい?」

「そうね、とりあえず飲み会には行かないで言ってくれる?」

それで、気が済むのならいくらでも・・・。

「飲み会には行かないでほしい。他の男に変な気を起こされては困る」

「分かった、行かないわ」

彼女は満面の笑みで、僕の隣に移動してきた。

「その代わり貴くんも、他の女の人から変な気を起こされると困るから、できるだけ飲み会には行かないで」

・・・うっ。ハメたな。

「もちろん、貴くん相手に何か企てようなんて人はいないと思うけど、噂っていうのは怖いから・・・ね」

・・・しょうがないな、とキスを仕掛けて・・・止めた。

「続きは仕事の後でね」

「もう、貴くんのいじわる」

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