「ねえ、僕の神経は図太いのかな?」
彼女の部屋に行くと仕事がたまっているとのことだったので、僕はソファーに横になって本を読んでいた。
「貴くんが図太かったら、私はもっと図太いことになるわ。だって、皇太子殿下そっちのけで、自分の仕事を片付けているんだから」
「それはお互い様だよ。来年からは僕の仕事に付き合わせることになるんだから、今は自分のことをしてて」
「そう言ってくれるのなら、貴くんは図太いんじゃなくて寛容なのよ」
彼女は椅子を回して、僕のほうを振り返った。
「ただし、いい意味でも、悪い意味でも」
「悪い意味とは?」
「・・・時々、私を放ったらかしにしているところ」
それを言われたら、立つ瀬がなくなってしまう。
「違う違う、物理的にという意味じゃないのよ。そうなると、今の私も放ったらかしにしていることになるじゃない。そうじゃなくて、同僚から『彼氏いないの?』なんて聞かれたときに、うまく答えさせてくれないこと。そのために私が飲み会に連れて行かれることもあるのに、貴くんは気にしていないこと」
そうか・・・、同僚のことまでは知らないな・・・。かと言って、挨拶に行くなんてことになると、それはそれで迷惑になるかもしれない・・・。どうしたらいいんだ?とりあえず起き上がって、彼女を見る。
「舞は僕にどうしてほしい?」
「そうね、とりあえず飲み会には行かないで言ってくれる?」
それで、気が済むのならいくらでも・・・。
「飲み会には行かないでほしい。他の男に変な気を起こされては困る」
「分かった、行かないわ」
彼女は満面の笑みで、僕の隣に移動してきた。
「その代わり貴くんも、他の女の人から変な気を起こされると困るから、できるだけ飲み会には行かないで」
・・・うっ。ハメたな。
「もちろん、貴くん相手に何か企てようなんて人はいないと思うけど、噂っていうのは怖いから・・・ね」
・・・しょうがないな、とキスを仕掛けて・・・止めた。
「続きは仕事の後でね」
「もう、貴くんのいじわる」