そこで、休憩のときに清水先輩のところに行ってみた。
「いいのよ、上柳さんはあまり役のことについて考えすぎないで。できれば、清純な、何も知らない女の子でいてほしいの」
それって、今は私がそう見えるってことですか?・・・いいのかな?悪いのかな?それはともかく、
「つまり、清純そうなところに惹かれるというわけですね」
「そう。・・・こういう言い方は失礼かもしれないけれど、祐輔の役の男にはそれが珍しかったのよ。だから興味を持って、駆け引きを楽しんでみようという気になった。ただし残念ながら、恋心は芽生えない」
かわいそう・・・。
「だとしたら、彼女にとってもその男性は高嶺の花なわけで、最初は信じられない。でも途中から嬉しくなってきて、調子に乗る。そして最終的には、自分に気を持たせようと必死になる・・・」
「そう。上柳さんには役をきちんとつかめているようでよかった」
・・・清水先輩は、兼古先輩がそんな役を演じることに抵抗ないのかな?
「だってこれは役の上での話だし、私情は持ち込まないようにしているわ。・・・まあ、実際にこんな男がいたら許せないと思うけど、今は、祐輔がそんなことをしてもおかしくないようなプレイボーイに見えるかどうかの心配をしているところね」
「ちなみに、兼古先輩はどうやって役作りしているんですか?」
「映画やドラマはよく観ているわよ。あと、時々は役について話し合うこともあるかな?」
・・・そうなんだ。清水先輩は、部活のときは兼古先輩に対してあまり意見を言わない。その分、二人きりのときに、言っているということみたい・・・実際に演じてみたりして?それは、兼古先輩を立てるため?
「だから心配しないで。今のところはうまくできていると思うから」
はい・・・。でも、兼古先輩の好みのタイプは清水先輩みたいな人。・・・知的で、大人で、綺麗な人。どれも私には重ならない。こんな私のことに興味を持ってくれるのかな?
「大丈夫。・・・ここだけの話だけど、祐輔は上柳さんを最初に見たとき、かわいい、って言っていたから」
・・・いや、それは、その。
「もちろんそのあとに、手の甲をつねっておいたけど」
・・・やっぱり清水先輩は強い。