役作りのほうは順調といえば順調だけど、やればやるほど難しいと感じるようにもなっている。男なら、とにかくモテる男を一度は演じてみたいと思うだろうけど、説得力を持たせるのは大変だ。よって、動画で研究する日々、と。
「イイ男ってどんな気分?」
行きがかり上、一緒に動画を観ている美智が聞いてくる。
「・・・それは何?役の上でってことだよな」
「ああ~、自信過剰。・・・でも確かに、祐輔自身もイイ男よね」
「そうかな?告白されたことは、意外と少ないんだよ、美智のおかげで」
中学のときから付き合っているから、かなり長い。俺の隣には、いつも頭のキレる美智がいる・・・普通の女の子は、恐れをなして逃げていく。
「その、イイ男とそうでない男の境目はどこにあるんだよ」
そうね~、と首を傾げて考える。
「まずは、外見がある程度よくないとね。もちろん、好みは人それぞれだと思うけど、10人中8人か9人は認めるカッコイイ人というのはいるのよ、現実に。そして、それとともに、付き合ってみたい、とか、自分のことが好きだったらいいな、と思わせてくれる人。それで実際に付き合ってみて、いいな、と思える人。まとめてみると、外見と中身が伴っている人っていう感じかな?」
そうだよな~。それは女の子の場合だってそうだ。いくらかわいくても、言葉遣いとか態度がきちんとしていない子は嫌だ。だから、役を作る上で気をつけることは、仕草とか、口調とか、視線とか、そして服装とかかな。外見はこれ以上変えられないし・・・。
「今の仕草カッコイイよな」
動画を少し戻して、もう一度観てみる。
「それが、祐輔にも似合うかどうかは別の話よ」
うるさいな、とりあえずやらせろよ。・・・どう?
「・・・祐輔には似合わないけど、役の彼ならしそうかな。・・・すると、その人は小物に凝っていそうな気がする。・・・けど、部の予算では、まかないきれないか」
「となると、今の仕草はやめろって事か?」
「バランスもあるし・・・、部長や沢渡くんと相談しましょ」
・・・だなんて、結局俺の役を作っていくのは、美智のような気がする。