9/8 (火) 19:00 イイ男作り

役作りのほうは順調といえば順調だけど、やればやるほど難しいと感じるようにもなっている。男なら、とにかくモテる男を一度は演じてみたいと思うだろうけど、説得力を持たせるのは大変だ。よって、動画で研究する日々、と。

「イイ男ってどんな気分?」

行きがかり上、一緒に動画を観ている美智が聞いてくる。

「・・・それは何?役の上でってことだよな」

「ああ~、自信過剰。・・・でも確かに、祐輔自身もイイ男よね」

「そうかな?告白されたことは、意外と少ないんだよ、美智のおかげで」

中学のときから付き合っているから、かなり長い。俺の隣には、いつも頭のキレる美智がいる・・・普通の女の子は、恐れをなして逃げていく。

「その、イイ男とそうでない男の境目はどこにあるんだよ」

そうね~、と首を傾げて考える。

「まずは、外見がある程度よくないとね。もちろん、好みは人それぞれだと思うけど、10人中8人か9人は認めるカッコイイ人というのはいるのよ、現実に。そして、それとともに、付き合ってみたい、とか、自分のことが好きだったらいいな、と思わせてくれる人。それで実際に付き合ってみて、いいな、と思える人。まとめてみると、外見と中身が伴っている人っていう感じかな?」

そうだよな~。それは女の子の場合だってそうだ。いくらかわいくても、言葉遣いとか態度がきちんとしていない子は嫌だ。だから、役を作る上で気をつけることは、仕草とか、口調とか、視線とか、そして服装とかかな。外見はこれ以上変えられないし・・・。

「今の仕草カッコイイよな」

動画を少し戻して、もう一度観てみる。

「それが、祐輔にも似合うかどうかは別の話よ」

うるさいな、とりあえずやらせろよ。・・・どう?

「・・・祐輔には似合わないけど、役の彼ならしそうかな。・・・すると、その人は小物に凝っていそうな気がする。・・・けど、部の予算では、まかないきれないか」

「となると、今の仕草はやめろって事か?」

「バランスもあるし・・・、部長や沢渡くんと相談しましょ」

・・・だなんて、結局俺の役を作っていくのは、美智のような気がする。

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