こうなると役どころの話ではなくなってくる。部長の暴走を止めないと、折角の作品にも影響が及ぶ。
「沢渡、部長と何があった?」
まずはその原因を突き止めないと。
「いえ、別に。・・・前に先輩が言ってきたような妙な噂のことであれこれ聞かれたんですが、質問にはきちんと答えました」
部長って、全国大会のあとに沢渡に謝っていたんじゃなかったか?・・・その気持ちをもう忘れてしまったのだろうか。
しかし、沢渡に聞いてみてもそれ以上は分からなかった・・・アイツは口の固い男だ、だから部長と話をすることにした。
「部長は、沢渡の何がそんなに気に入らないんですか。これが部長にとって最後の舞台なんですよ、自ら壊すような真似はやめたほうがいいんじゃないですか?」
部長は、祐輔は相変わらずはっきり言うな、と漏らして、
「分かってるよ、沢渡は貴重な戦力だ。でもどうにも解せない。アイツが・・・」
「そんなことどうだっていいじゃないですか。俺たちは高校生なんですよ、学校にいるときの彼だけを見ていればいいでしょう」
「お前が生徒会長選挙に出るのだって、今のうちからコネを作っておこうという魂胆じゃないのか?」
は?
「何を言い出すかと思ったら・・・。俺まで怒らせたいんですか」
「どうしてお前は、そこまで沢渡に加担する?」
「・・・先輩がいじめるからじゃないですか」
「そうか、お前は正義の味方か・・・」
部長は立ち上がると、部室の窓のそばに行って、外を眺めた。
「お前のやり方のほうが賢明だってことは分かっている。でもどうしても急には素直になれない」
「結局僻んでるだけじゃないですか。そんな態度に出ると、ますます彼を認めているということになりませんか?」
「俺はひねくれ者ってわけか・・・」
・・・部長の役の男のようにならないことを願っていますよ。