9/12 (土) 23:00 演技と本気

部活のとき、女の子を誘うシーンの練習をしていたら、勢いあまって、実際に唇が触れてしまった。

「ゴメン、やりすぎた」

ステージ上でそんなことをしてしまったら、観客の神経がそこにばかり注がれてしまって、芝居どころではなくなる。・・・コンクールでならいいのだが、クリウスの学生相手の場合はそうはいかない。

「でも、本気の演技ゆえに起こってしまったことならしょうがないわよね」

・・・のわりには、怒ってないか?美智。

「なあ、練習に付き合って。・・・女の子はどんな風に愛されたいんだ?」

こんな貴重な場をみすみす逃すわけにはいかない。

「嫌よ。他の女の子のことを想定しながら私のことを見たりしないで」

「違う、逆だ。俺は俺、そして美智が自分の中のいろいろな面を出してくれればいい。例えば、大人な部分とか・・・、弱気な部分とか・・・、本能的な部分とか・・・」

そっと顔を背けた彼女に触れると、体温がふわっと上がったのが感じられた。・・・かわいい。

「いや、だ。そんなの・・・恥ずかしい」

人にいつも演技させといて、自分だけそんなことを言うなよ。

「じゃあ、しばらくはそうやって恥ずかしがってて・・・」

「何を言い出すのよ、祐・・・」

続きは言わせない・・・。大胆に唇を奪って、そのままソファーに押し倒し、体重をかけるようにのしかかる。

「いやっ・・・」

空いている右腕が、バタバタと宙を舞う。

「もっと俺のことを拒んで・・・」

すると、もう声にならないのか、顔を背けたまま、耐えるような表情で眉間に力を込めた。

・・・普段は勝気な彼女が見せる表情が、とてもかわいらしい。ここまで来ると、演技なのか本気なのかよく分からない。でもとにかく、そそられるのは確かだ・・・。

「愛してる・・・」

言うと今度は急に目を開け、俺を睨んできた。・・・ますます、かわいい。

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