家に帰ると、親父が待ち構えたように座っていた。
「ただいま・・・」
「ただいま、じゃないだろう。ちょっとここに来て座りなさい」
広げていた新聞を折りたたむと、怒り心頭な顔で俺を見据える。
「聞けば、週末の夜は決まって外泊しているそうじゃないか。高校生のくせに何をやってる。今しか出来ない大事なことが他にもあるだろう」
・・・いえ、これが今しかできないことだと思いますが。
「何だその態度は。自分の将来もまだ決められないヤツが、偉そうな態度をとるんじゃない」
それは・・・。それを言われると、大きな態度には出られない。・・・作戦を立てねば。
「お父さんの高校時代はどんな感じでしたか?」
すると、私のことはいいんだ、と口ごもった。・・・これはしめた。
「確かに、将来のことについては決めかねています。だから、人生の先輩の実体験は参考になると思いまして」
そういえば、親父の話なんて聞いたことがない。何せいつも家にいない人だ。そのくせ、たまに帰ってきたときにはうるさいことを言う。仕事だと言っているけど、外では何をしているのか分かったものじゃない。
そして、親父が渋々口を開いた。高校生の時には他に夢があった。しかし父の命令で法学部に行かされ、政治家になった、と。
「何も、私の後を継いで政治家になれと言っているわけじゃない。一人の男として身を立てられる職業を選ぶなら、反対はしない。だからよく考えなさい。男には経済力が必要だ。それがなければ、女性と暮らすことだってできないんだぞ」
誰もそこまでは考えて・・・。美智と一緒に暮らすとか、それすらも考えたことがなかった。今では彼女がそばにいるのが当たり前になっていて、特に何も感じない。・・・この関係はいつまで続くのか?結婚なんてことはまだまだ考えたくない。いや、それより先に俺の将来か・・・。
俺はどこに行くのだろう。