教室で・・・。
変に意識するのはよくないと思うのだけど、気にしないというほうが難しい。いよいよ文化祭が目前に迫ってきて、部のほうでは明日から合宿、クラスのほうの準備も佳境に入ってきている。・・・まあ、沢渡の手際のいいこと。やっぱり彼には人を見抜く才能があるのだと思う。模擬店を開くに当たっての仕事の分担は彼がほとんど一人でやってのけた。そしてみんなは与えられた仕事をこなす。・・・見事なる適材適所。僕は当然のように力仕事には借り出されないし、なおかつ火や刃物を使う場にも近づかなくていい、沢渡の伝達役。
「沢渡くんって凄いよね~。鮮やかな人使い」
ギクッ。いきなり沙紀ちゃんに話しかけられてドキドキしてしまった。
「あ、ああ、そうだね。僕も感心していたところだよ」
その言葉に嘘はない。
「でも、部長とゴタゴタしてるの知ってる?私ね、この間兼古先輩が沢渡くんのことで部長に意見しているところを聞いちゃったのよね。・・・凄い迫力で、怖かった」
「それいつのこと?」
「先週のことよ。あまりにもビックリしすぎて、誰にも言えなかったの」
部活中はそんな様子を見せていなかった。・・・大体、兼古先輩が激しい口調になるところ自体想像できない。沢渡はそのことを知っているのかな?
「そのことを考えると、明日からの合宿のことも心配にならない?何だか一悶着ありそうな気がするんだよね」
「・・・でも、それは先週のことでしょ?その後解決したかもしれないし」
「朝霧くんって楽天的ね。・・・急にそうなるかな?」
「だって、クラスのこともうまくまとめてくれるのが沢渡だから、きっとうまくいくよ」
彼の様子を見る限り、何だかもう開き直ったような様子だから・・・。
「朝霧!」
その姿を見つめていたら、彼が振り返った。
「先生のところに行って来てくれたのか?まさかサボってるわけじゃ・・・」
うわ、ごめんなさい、今から行ってきます。・・・いくら僕の気持ちを知っているにしても、仕事に関しては厳しいからね、怖い怖い。・・・そういえば、彼女と自然に話せていた。それだけに邪魔してほしくなかったな。