久しぶりに平和な一日。
夕方から結城と一緒にドライブに出かけ、いろいろな話をしている。
「これでしばらくは安心なんじゃないか?清水さんと兼古くんは、お前の味方だからな」
そうだね。・・・演劇部の新しい部長は清水先輩。昨日話を聞いたのだけど、すでに新作の構想が練りあがっているらしい。
「でも、来週からは兼古先輩の選挙の応援をしなきゃいけないから、また忙しくなるよ」
実は午後は部活、ではなく選挙運動に関する打ち合わせがあった。この間はダンスもバッチリこなしていた先輩のこと、毎日日替わりでいろんなパフォーマンスをすることになっている。
「そうか、でも響の言うことを聞いてよかったと思っているよ。最初はイストに行かせようか、という話もあったんだ。クリウスはお前には合わないような気がして。そこに、響の一押しがあって決まったんだ」
そうだったんだ。イストは陛下や結城の母校。我が国有数の進学校で、王宮人も数多く輩出している。ただ校風的にはクリウスとは正反対で、とにかく実力至上主義。・・・イストとクリウスとは、いわば犬猿の仲である。
「イストには行ったことがないから分からないけれど、僕はクリウスが気に入っているよ。毎日面白いことがいろいろ起こるから。・・・朝霧は文化祭中にデートしていたし」
「ああ、この間の女の子とか」
「そう」
「でも、上柳さんはいなかったな」
・・・やっぱり、あの時探していたのは、上柳さんだったのか。
「最近ではあまり接点がないからよく分からない。先輩とうまくやっているのかな?」
「そうか?うまくいってるって顔じゃなかったぞ」
・・・いつ会ったんだよ。
「でも僕に何が出来る?」
「・・・友達として出来ることがあるんじゃないか?」
あるかな?
「だから、時々は気をつけて見てあげろよ」
「結城は、高校のとき彼女がいた?」
なんだよいきなり、と、いぶかしげな目で僕をチラリと見る。
「そりゃ、いたよ。俺だって、燃えるような恋をいくつか経験したよ」
そうなんだ・・・。
「でも、俺は恋だけには生きられなかった。今でも、あの時もしも・・・なんて考えることがあるけど、俺は出来る限りのことはしたと思う。そんな俺からのアドバイスは、男らしく、そしてお前らしくいろ、だ」
今の僕はどうかな?僕らしく、は大丈夫だと思うけど、男らしく、は合格ラインにいるのかどうか微妙だ。
「それはともかく、この秋からはまた一仕事してもらうことになるからしっかりしろよ。とりあえず、11月に2週間ほど研修に行ってもらうから、そのつもりで」
はい・・・。ということは、その間学校は休み?・・・それは大仕事だ。