・・・上柳さんは休みか、どうしたのかな?
昼休み、僕たち・・・朝霧、沙紀ちゃん、村野さんの四人は一緒に昼食をとった。
「一応メールを書いたんだけど、返ってこないのよ。そんなに具合が悪いのかな?」
表向きな理由は風邪ということになっているけど、僕もそれは怪しいと思う。
「園田先輩は来てるのかな?」
朝霧が言うので兼古先輩に電話で聞いてみると、普段と変わった様子はないと言う。でも、上柳さんが休んでいることを伝えると、気をつけて見てみる、と言ってくれた。
「一人になりたいのかもしれないから、今日のところはそっとしておいてあげようよ」
沙紀ちゃんはそう言い、僕たちもそれに同意した。
放課後、僕は実家に帰り、母の手伝いをすることにした。今日は兄の誕生日。相変わらず仕事が忙しいとのことでいつも帰りが遅いらしいが、今日は早く帰るとのこと。
「誕生日を祝ってくれる人がいないのかしらね?」
母は笑っていたが、素直に、仕事が忙しすぎてそんな暇がないのだと思う。
兄はお酒が入ると、饒舌に語り出す。念願だった建築設計事務所を構えることが出来て、幸せな毎日だと言う。
「建築をやっていていいのは、努力の結晶が目に見えた形で現れるってことだよ。家が少しずつ出来上がっていくところは見ていて面白いし、完成したときに喜んでもらえると本当に嬉しくなる。ただ逆に、多くの人の目に晒されるし、残るものだから、怖いところもあるけどね」
兄の部屋にはいくつもの模型が置かれている。それらは外から見るととても芸術的な感じがするのだけど、住み心地はいいのだそう。そして言うまでもなく、それらは僕の好みに合っている。
「もうすぐ引っ越すことになりそうなんだけど、どんな家具を置こうか悩んでいるんだよね」
「引越し?」
うん。春になったら、もう少し広い部屋に入れそうなんだ。
「でも宮殿の部屋のつくりがどうなっているか分からないから何とも言えないな・・・。でも、カタログとか雑誌はたくさんあるから、いくらでも持って行っていいよ。それから、今度仕事先に同行しないか?いろいろな家を見たらめるかもしれないよ」
それは嬉しい。兄が設計した建物を実際に見てみたい。