「それで今日のテストの出来は?」
と朝霧に聞いてみる。
「まあまあかな?・・・結城さんからは睨まれそうだけど」
また、そんなこと言って・・・。
「でも、怒られそうではないから、いいんじゃないかな?」
睨まれる・・・は、十分、怒られてる、と思うけど。
そして今日も、僕の部屋で勉強は続く。でも、僕は来月のことでいろいろと資料を渡されていて、それを読むのに必死だ。
「ねえ、ちょっと・・・」
不意に朝霧の声が届いて我に返った。
「あ、ゴメン。邪魔した?」
「いや、別に」
あまりに書類に集中していたせいか、朝霧の存在を忘れていた。
「大丈夫?」
って聞きたいのは僕のほうだよ。昨日も沙紀ちゃんからメールが来て、相談を受けてしまった。女の子が不器用なのはかわいいと思うけど、どちらかがリードしなければ、前に進めない。・・・というのはさておき。
「で、聞きたいのはどれ?」
「ああ、この数学の問題だよ」
なになに?・・・問題文を読んで、解説してあげる。
「沢渡が先生だったら分かりやすいのに・・・」
・・・ウチの数学の先生の教え方も、十分に分かりやすいと思うけど。
「でも、朝霧は質問の仕方がうまいよ。・・・別に数学に限らず、質問するとき、凄くいいところを突いて来るよね。でも君は、所詮受身でしかない。何かが前もってないと動けないところがある。・・・沙紀ちゃんは、君にリードしてもらいたいんだよ。彼女のために何かしてあげたいと思うのが、男じゃないか?」
朝霧は、う~ん、と首を傾げて固まってしまった。