今日の部活に、上柳さんは来てくれた。・・・兼古先輩はずいぶん喜んでいたみたいだった。これで、今月の作品は予定通り。
休憩時間に上柳さんが僕に何か話したそうにしていたので、僕たちは空き教室に向かった。
「沢渡くん、あのね・・・」
とても言いにくそうにして、彼女は僕を見ない。
「どうしたの?」
・・・そして僕は辛抱強く待つ。
「実は・・・、私、怖いのよ」
怖い?
話を聞くと、上柳さんは園田先輩からの誘いを断った。それ以降、変なメールが届いたり、登下校の途中で人の気配を感じたりするようになったという。
「でも、私の口からやめてだなんて、とても言えない。このことを打ち明けたのは、沢渡くんが初めてよ。怖くてしょうがないの」
それはそうだと思う。・・・どこまで性質が悪いんだ、全く。
「とにかく一人にならないことだよ。学校にいる間は必ず沙紀ちゃんといるように。それから、何かあったらすぐに僕に電話して。先輩のことは、兼古先輩と相談してもいいかな?兼古先輩は同じクラスだし、動きやすいと思うから」
「でも、兼古先輩にはこれ以上迷惑をかけられない。それでなくても、2年の先輩から変な目で見られるようになったし・・・」
女の人はどこまで怖いんだ・・・。
「でも話はするよ。兼古先輩には仲間がたくさんいるし、先輩が自ら動かなくても何とかしてもらえると思うから」
分かったわ・・・、と、その場はそれで別れた。僕が直接動くのもまた危ないと思ったのだ。
夜。いつものように有紗さんと一緒にいると、電話が光った。
「出るの?」
と有紗さんが怪訝そうな目で僕のことを見たけれど、ディスプレイには上柳さんの文字があったので、電話を手にベッドから離れた。