再びベッドに戻ってきたときには、有紗さんはカンカンになって僕を睨みつけていた。
「どういうことよ」
「いえ、別に大したことじゃありません。有紗さんだって、夜中に悩みの森に迷い込んでしまったときには、誰かの声が聞きたくなりませんか?」
「・・・別に、希じゃなくてもいいじゃない」
でも実際、僕は多くを話したわけじゃない。大丈夫だよ、って言ってあげただけだ。
「その分は埋め合わせはしますから、何でも言ってください」
ということでその場は納めたのだけど、朝が来るのを待って、すぐに上柳さんのお宅に向かった。一人にしてはおけなかった。
とりあえず僕たちは、クリウスの学生がいなさそうな喫茶店に行き、席についた。
「どうしたの?」
「眠れなくなって・・・。先輩から何かされたわけじゃないんだけど、何かされるんじゃないかって思ったら、一人でいるのが怖くなって・・・電話したの」
「それで、それからは眠れた?」
「うん・・・。自分でも驚くくらいあっさりと。・・・沢渡くんの声って魔法みたいだった。それだけで、安心することができた」
それはよかった・・・。でも、よくなかったのかも。・・・けど、今はそんなことを言ってはいられない。
昨日、兼古先輩に事情を話すと、園田のことは任せろ、と言ってくれた。その分、僕には上柳さんの面倒を見るように、と。・・・この場合、僕しか、いないんだよね。
「君のことを励ましてあげる。いつだって安心させてあげる。・・・友達としてできることなら、何でもするよ」
「友達としてできること・・・ね」
「それは分かってるよね」
「うん。・・・友達としての沢渡くんは優しいもんね。・・・だから、沙紀と朝霧くん、四人で一緒にいてくれる?」
それなら喜んで。・・・でも朝霧にはショックが大きいみたいだけど。