10/18 (日) 10:30 落ち着き

再びベッドに戻ってきたときには、有紗さんはカンカンになって僕を睨みつけていた。

「どういうことよ」

「いえ、別に大したことじゃありません。有紗さんだって、夜中に悩みの森に迷い込んでしまったときには、誰かの声が聞きたくなりませんか?」

「・・・別に、希じゃなくてもいいじゃない」

でも実際、僕は多くを話したわけじゃない。大丈夫だよ、って言ってあげただけだ。

「その分は埋め合わせはしますから、何でも言ってください」

ということでその場は納めたのだけど、朝が来るのを待って、すぐに上柳さんのお宅に向かった。一人にしてはおけなかった。

とりあえず僕たちは、クリウスの学生がいなさそうな喫茶店に行き、席についた。

「どうしたの?」

「眠れなくなって・・・。先輩から何かされたわけじゃないんだけど、何かされるんじゃないかって思ったら、一人でいるのが怖くなって・・・電話したの」

「それで、それからは眠れた?」

「うん・・・。自分でも驚くくらいあっさりと。・・・沢渡くんの声って魔法みたいだった。それだけで、安心することができた」

それはよかった・・・。でも、よくなかったのかも。・・・けど、今はそんなことを言ってはいられない。

昨日、兼古先輩に事情を話すと、園田のことは任せろ、と言ってくれた。その分、僕には上柳さんの面倒を見るように、と。・・・この場合、僕しか、いないんだよね。

「君のことを励ましてあげる。いつだって安心させてあげる。・・・友達としてできることなら、何でもするよ」

「友達としてできること・・・ね」

「それは分かってるよね」

「うん。・・・友達としての沢渡くんは優しいもんね。・・・だから、沙紀と朝霧くん、四人で一緒にいてくれる?」

それなら喜んで。・・・でも朝霧にはショックが大きいみたいだけど。

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