10/22 (木) 21:30 時期

「じゃあ、朝霧に上柳さんのことを頼むよ。僕は沙紀ちゃんの面倒を見るから」

と沢渡が言い、事態は逆転してしまった。でも部活で作品を仕上げること、が優先事項であることはみんな一緒。それに沙紀ちゃんとしても、沢渡と近づけるのはまんざらでもないらしい。

そして僕たちは、今日も部活終了後に打ち合わせをした。・・・実際に今日の部活で試してみたら、部長からも好評だったから嬉しい。

でも今日は、四人でいても二対二に話が分かれてしまっていた。・・・それは僕たちにしては特に問題ないと思うけど、他の人から見ると変な集団かもしれない。

「折角カップルの役をするんだから、何か同じアクセサリーをつけてみない?そのほうが観ている側にも伝わると思うよ」

「それはいいかもね」

「じゃあ、これから一緒に買い物に行かない?いいよね、沙紀」

そんなことを言っちゃってもいいのかな?と思っていたら、沙紀ちゃんは、行ってらっしゃい、と言って手を振った。・・・上柳さんってまさに、女友達よりも男を選ぶタイプだね。

「沙紀ちゃんのこと大丈夫?」

おそろいのチョーカーを買ったら、店員さんから、仲のよいカップルだ、という視線が向けられた。

「どうして?」

「どうして?じゃないよ。役のことも大事だけど、君と沙紀ちゃんは友達だよね。そっちのほうが、ずっと長く続いてく大切なことだよ」

「でも逆に言えば、この役に集中できるのは今だけよ。来週には撮影があるじゃない?そしてそれが終われば、今までのことはなかったことになるのよ」

そうだけど・・・。沙紀ちゃんの、僕を見る目が痛いんだよ。

「確かに僕たちはうまくいかなかったかもしれない。でも、もし上柳さんが沙紀ちゃんの立場だったらどうする?」

はっ、と上柳さんが絶句した。・・・そうだよ、園田先輩に新しい彼女が出来たら、面白くないはずだよ。

「でも私たちは単なる友達で・・・」

「もちろんそうだけど、今は時期が悪いってことだよ」

うん・・・。上柳さんは小さくなって頷いた。

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