何やらかなみは、結構マメに沢渡と話しているらしい。
「沢渡は忙しいんだから、あまり長電話するなよ」
“え?電話してきてくれるのは沢渡さんのほうだし、いいかな?って”
・・・そうなのか?
「かなみは、沢渡のことをどう思ってる?」
“どう・・・って言われてもねえ”
その声の様子から、顔を赤らめているのが伺える。
“でも沢渡さんは所詮憧れの人でしかない。沢渡さんのほうも、私がお兄ちゃんの妹でなかったら私と親しくしてくれていないと思う”
やっぱりそうなのかな?・・・でもなかなか、いいところを突いてるな。
「かなみには男友達っている?」
“私が通ってるのは女子校だよ?辺りは女の子ばっかり。男友達より、彼氏がほしいよ。でも、学校にばれるとマズイの”
いたるところにカップルがいるクリウスは、特殊な環境というわけか。
“それにしてもどうしたの?お兄ちゃんの方から電話をかけてくれるなんて珍しいじゃない”
え?・・・鋭いな。
「いや、沢渡が最近少し困っているようだから、何か知らないかな?と思って。大体いつも何を話しているんだ?」
“別に普通のことよ。芸術の話とか、私の学校の話とか。沢渡さんは、私みたいな妹がほしいって言ってくれるのよ。乗り換えちゃおうかな?”
・・・そんなこと出来るわけないだろ。
“でも困っているのは、お兄ちゃんのほうなんじゃないの?絶対なんか変だもん。彼女でもできた?”
「違うよ、そんなんじゃない」
“そうだよね、お兄ちゃんはヴァイオリンが彼女だもんね”
「あのね・・・」
“別に悪い意味じゃないよ。私はお兄ちゃんのヴァイオリンが好き。続けていくのは大変だって分かっているけど、頑張ってほしいな”
うん・・・ありがとう。・・・でも、どうしてかなみに電話をしたのだろう?何を聞きたかったのだろう?・・・妹相手にも、ワケの分からない話しかできないのか?僕は。