いろいろすったもんだはあったけれど、やっと撮影までこぎつけることができた。撮影と言っても舞台で演じる様子を撮影するので、ドラマのような演技ではなく、舞台用の演技が要求される。
それにしても、1年のゴタゴタには困ったものだ。何も台本通りに本当に揉めなくても・・・。でもそれだけに、リアリティーのある演技を披露してくれるかと思って、俺たちはあまり口出ししなかった。
今日は沢渡との絡みのシーン。俺の役は少々悪い男。友人である沢渡を、その道に引きずり込もうとする。
祐輔:沢渡、お前も来いよ。いいものがあるんだ。
沢渡:何ですか?
祐輔:お前も、毎日生きてると、面白くないことだってあるだろう?ちょっとした現実逃避だよ。(あるものを手渡す)
沢渡:でも先輩、これは・・・。
祐輔:ほんの少しだから大丈夫だ。気持ちよくなれるぞ。
沢渡:でも、これは法律で禁止されているもので・・・。
祐輔:法律がなんだって言うんだ。お前は自分で価値判断ができないのか?折角お前に勧めているっていうのに、それを断るのか。
沢渡:先輩は、いつからこんなものをやっているんですか?・・・先輩にはとても感謝しています。でも・・・、これだけはできません。
祐輔:そうか、だったら、あのことをみんなに話してもいいんだぞ。お前がその気なら、こっちだってそれなりの対応はさせてもらう。
沢渡:そんな・・・。(絶句する)
祐輔:俺は無理強いはしたくない。お前が自主的に欲しがるところが見たい。(と言いながら、沢渡が逃げられないように男が取り囲む)
沢渡:(おどおどしながら)・・・僕にもいただけますか?
祐輔:それでこそ、俺の友人だ。
・・・沢渡がおどおどしているところなんて、なかなか見られない。そんな彼を手なずけられるなんて、俺にはちょっとした快感だったりする。・・・そう思うと、俺って結構悪い男なのかも。
「もう、先輩。怖すぎです」
沢渡もなかなか楽しんでいるみたいだ。