その後、部室はかなり険悪なムードになってしまった。
「3年が引退した後は、仲良くできるはずじゃなかったのかよ」
“そんなこと言われても、私が脚本を書いたときには、こんなことになるなんて思いもよらなかったから・・・”
そうだよな、美智を責めてもしょうがない。俺にとっても予想外のことだった。今俺たちは崩壊しかかっている演劇部を、再びまとめる方法を考えなければならない。それで深夜の長電話になっているのだ。
「みんな役に入りすぎてるってだけじゃないかな?この撮影が終わって次の作品に取り掛かれば、何事もなかったかのように元に戻るとか?」
“確かに次の作品では、こんないざこざは起こらないと思う。・・・今回、同じ高校生で、そのまま名前を使ってもらったのがいけなかったのかしら?”
「どうやらそうみたいだな。何もかもがうまく行かなかったというか、たまたまそういうよくないことが立て続けに起こってしまった。・・・不運だっただけだよ。でも起こってしまったことはしょうがない、これからどうするかだよ。とりあえず土曜の夜に、みんなで食事に行こうか」
“確か、沢渡くんは土曜の夜は都合が悪いと言っていたわ”
そうか。それだけでなく、来月2週間ほど学校を休むとも言っていたな。
「でも逆に、沢渡がいないほうがうまく収まるかもしれない。沙紀ちゃんまで、沢渡に執着しているような気がしないか?」
“そうね。・・・沢渡くんって、意外と不器用よね。本当はみんなに優しくしたいんだと思うんだけど、本人の意思とは別に、周りが妙に意識した上で近づいてくるものだから、彼もどうしていいのか分からないんじゃないのかな?・・・それにしても罪作りよね。あんな美貌を目の前にして、普通に振る舞いなさいなんて言われても無理だもん。しかも本人は、自分の美貌に対して特に意識していないみたいだし”
・・・おいおい、美智も惑わされている一人なのか?・・・という俺も、あまり他人のことは言えないけど。
「じゃあ、沢渡抜きで話をしてみようか。それで収まればいいし、そうでなければまた考えよう」
“そういうことね”
でも一番困っているのはアイツっぽいから、アイツのフォローもしてやらないとな。