今日の遠足は、特に変わったこともなかった。でも帰り際に、上柳さんから声をかけられた。・・・ごめん、今日も用事が。
ということで、僕は先日お会いした鷲塚さんの仕事場に来ていた。写真撮影ってどんなことをするのかな?
「とりあえずそこに立ってみて」
一緒に来てもらった仲野さんに手早く髪を直してもらい、スーツ姿でカメラの前に立つ。・・・響き渡るシャッター音。
「沢渡くんは、自分の外見についてどう思ってる?」
・・・どうと言われても、生まれてからずっとこうですからね。
「いや、今のままではその外見を活かしきれてないと思うんだよね。内面とのバランスがちぐはぐで、もったいない」
はぁ・・・。
「もっと君はカッコイイはずなんだ。何も自分から印象を歪めてしまう必要はない。カッコイイ男に生まれたからには、その武器をフルに使わなきゃ。特に君みたいに、今後人前に出るような仕事をする場合にはね」
「今までは、この外見のおかげで苦労してきたように思うのですが・・・」
・・・何か変な気を起こさせてしまうらしい。
「そうかな?自分を偽ったりするから、疲れるんだよ」
自分を偽る?
そこからは鷲塚さんの指示で身体を動かし、ポーズをとってみた。最初は緊張していたけれど、音楽と鷲塚さんの話術に、それもだんだん解けていくのが分かる。
「君は演劇部なんだってね。ということは変身願望が強いの?」
「そうです。別人になっているときほど、気持ちのいいものはありません」
「そうかな?今の君ももちろん君自身だけど、最初にここに入ってきたときの君とは違うように見えるよ」
そして写真を見せていただくことにした。最初の写真は、自分で言うのもなんだけど腐っていた。それがだんだん見られるような写真になっていき、最後のほうには驚くほどカッコイイ仕上がりになっていた。
「自分の武器を使いこなせていないのに変身も何もないよ。君にはまだまだ魅力がある。僕にそれを引き出させてくれないかな?」
・・・それは、こちらからお願いしたいくらいです。