僕は嬉しくて、早速結城にその写真を見てもらった。
「確かによく撮れてるな。撮ってもらっている時の気分はどうだった?」
「途中からどんどん気持ちよくなっちゃって、まるで別人になれたみたいだった。・・・それを鷲塚さんに言わせると、本来の僕なんだってことになるらしいんだけど」
はは~ん、と、結城は何やら一人で納得していた。
「響の狙いはそこか。アイツもつくづくマメなことで・・・。この忙しいときに」
・・・殿下にも見ていただきたかったのだけど、仕事でいらっしゃらない。確かに、そんなに僕って危うそうに見えたのかな?でもこの撮影会で、今までのモヤモヤが吹き飛んでしまったかのように思われるのは事実。
「撮影会は、またあるのか?」
「うん、まだまだ僕には魅力がつまっているって」
「でも、お前も普段からそれを自分で引き出す努力をしろよ。撮影会でだけ本来の自分を発揮する、なんてことになったら、それもまた演じてることと変わりがなくなる。鷲塚さんの言うとおりだよ。もっと、普段の自分を変えていかないと、余計苦しいことになるかもしれないぞ」
・・・だって、男たちはこの顔を見ると殴りたくなるらしいし、そうされないためには控えめに行動するしかないじゃないか。
「確かに、この作りは美しいよな・・・まるで芸術だ」
結城が顎から頬にかけて指でなぞる。
「俺はこの顔を見ると、キスしたくなる」
もう、そういうことを言ってるんじゃなくて。
「その撮影会、今度は俺も行くよ。お前のすべてを見てみたい」
・・・だから、その言葉は危ないって。それから、冗談でも僕を誘うような眼差しを向けないでくれる?
「結城だって、撮ってもらえばいいのに。僕はそっちのほうが見てみたいよ」
「何言ってんだ、お前は。折角の響の好意をありがたく受け取っておけよな。つまりは、学校生活の小さな出来事に振り回されないで、お前はお前らしくしろってことなんだから。それは分かっているだろう?」
はい・・・。今までは自分から離れたくてしょうがなかった。この顔でなかったら、とか、次期皇太子でなかったら隠し事のおかげで後ろめたい気分を味わうこともなかったに違いない、とか。でも逃げていてもしょうがない。僕は他の誰でもない僕なのだから、しっかり向き合っていかなければ。そのきっかけを僕にくださったのだと思う。