11/18 (水) 14:30 満たされた気持ち

先日のイベントのおかげでまたカップルが増えたな・・・何だか、廊下を歩いているだけでウキウキした空気が伝わってくる。

美智には指輪を買ってあげた。・・・一人と長く付き合っていて面白いのかと聞かれたけれど、俺としては気がついたら長く付き合っていることになっていたというだけで、特別な意識はない。彼女は、才能があって、いつも落ち着いていて、居心地がいい存在。俺自身も彼女がいると落ち着くことが出来る。・・・そんな日常のお礼の気持ちを込めて、ちょっと無理をしてでもデザイン性の高い指輪をプレゼントしようと思った。

「学校につけてくるにはもったいない気がしたけど、いつもつけておきたいと思って」

気に入ってくれてよかった。とてもよく似合っている。

「ねえ、ちょっと見てよ」

今は学食。美智の考えも俺と同じだったらしく、辺りを見回しては新しいカップルの把握に努めている。・・・言われて振り返ると、上柳さんと村野さんがいた。沙紀ちゃんは・・・?

「朝霧はクラスメートと一緒にいる。・・・沙紀ちゃんに彼氏が出来たのかな?」

「どうやらその可能性が高そうね」

でも、となるとまた上柳さんがかわいそうだ。園田は、土日を計算に入れないので今日まで停学。今だけは平和な気分を味わえるのに、いいことは起こらなかったみたいだ。

・・・実は平和なわけでもない。停学を不服とした園田の父親が学校に乗り込んできたらしい。幸い俺はその後特に呼び出されたりはしていないが、何せ相手は大企業の社長。何をされるのか分かったものじゃない。・・・ウチの親父まで巻き込むと、それこそ大変なことになるので、内心ヒヤヒヤしているところだ。

「でも、他人の恋愛にまで口を挟むのはやめろよ」

ロクなことがない。

「あら、他人のことを言える立場にいる?祐輔だって興味津々なくせに」

「そうだけど・・・、俺たちだってまた新たな一歩を踏み出したところなんだから」

・・・そうよね、と美智は辺りを見回すのをやめて、俺に視線を戻した。

「本当に嬉しいの、ありがとう」

その笑顔があれば、俺は満たされる。

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