ふと目覚めると、有紗さんが僕の髪をなでていた。・・・大変だ!こんな貴重な夜に僕はうっかり寝てしまっていた。
「すみません」
「いいのよ、活躍ぶりは聞いているわ。いくら若いとは言え、大変だったでしょう。お疲れさま」
ありがとうございます・・・じゃなくて、帰ってきてそのまま寝てしまっていたから、シャワーを浴びないと。でも急に起き上がったからなのか頭痛がして、またソファーに逆戻りしてしまった。
「いいのよ、じっとしてて。今まで散々無理をしてきたんでしょ」
正直疲れた。慣れないことをしたからか、テンションを上げすぎたからか、身体も脳も限界のところまで来てしまっていた。でも一つ忘れてはいけないことがある。
僕は何とか立ち上がって、引き出しの中から包みを取り出した。
「遅くなりましたが、Pink Ribbon Dayのプレゼントです」
Blue Ribbon Dayのときに相当じらされたので、会えるまで渡さないつもりでいたのは最初だけで、同じ宮殿内にいたけれど、当日には忙しすぎてそのことをすっかり忘れてしまっていた。でも事前に用意しておいてよかった。
「何かしら?」
有紗さんは嬉しそうにリボンを解いて、袋を開けた。
「意外と寂しがりな有紗さんに・・・」
僕が言うと、そんなことないわよ、と言いながらも、まんざらではなさそうに手に取っていた。・・・僕が選んだのは、ウサギのぬいぐるみ・・・ただし、有紗さんが僕にくれたコロンを振りかけたもの。
「どうせなら、今抱いておいて」
有紗さんはぬいぐるみを僕に差し出した。
「コロンだけついていても、希の香りじゃないわ。・・・ねえ、お願い」
分かりました。・・・そして僕は、ぬいぐるみを抱えて座り直した。・・・有紗さんは否定しなかった。もともとは有紗さんから言われて付き合うようになったものの、僕のほうが常に下手に出ていたはずだった。なのにこのところ、有紗さんのことを放っておけないと思うことがある。・・・彼女は僕を、一人前の男として見てくれている。だから僕も、そのつもりで彼女を愛してあげたいと思う。
ちょっと元気が出たので、シャワーを浴びてくることにする。