久しぶりの学校・・・なのだけど、教室に入るなり、
「痩せたんじゃないのか?どこか悪かったのか?」
と言われ、出鼻をくじかれてしまった。でも、
「違うよ。ちょっと忙しかっただけ」
と殿下に買ってきていただいたお土産を配ると、みんなもそちらに気を取られて、僕のことをあまり気にしなくなったようだった。・・・さすがに、グルメな殿下に選んでいただいただけのことはある。おいしいと評判だった。感謝。
「沢渡くん、お帰り」
冗談ともつかないような様子で上柳さんが言ってきて、僕と朝霧、村野さんの4人で学食に行った。僕だけ演劇の練習が遅れているから、この二週間の状況を少しでも聞いておこうと思ったのだ。
・・・でも沙紀ちゃんはいない。由利くんと何やら順調みたいで、いつも一緒にいるとのこと。
「で、沢渡くんのお土産話はなしなの?」
村野さんが何気なく言った。・・・事情を知らないのは村野さんだけだ。
「それはまた、機会があればさせてもらうよ」
「そうなの~?・・・実は外国に行ってなかった、っていう噂もあるけど?」
・・・やっぱり、そんな噂が広まるんだね。
「いいじゃない。僕には僕の時間の過ごし方があるんだ。今しか出来ないことをやりたい、その一つが演劇なんだから、協力してよ」
ふ~ん、と村野さんは興味深げに聞いてくる。
「沢渡くんって、卒業したらどうするの?」
それは・・・、まだそこまでは考えられない。おそらく大学に進学するのかな?と思うけれど、実地の訓練を受けたほうがいいのかもしれない。それとも、すでに仕事をしているかもしれない。
「まだ分からないよ。3年になったら考える。・・・村野さんは?」
「私は、とりあえず進学かな?学部はまだはっきり決めていないけど、クリウスかな?まゆは?」
え?私?・・・と彼女は固まった。・・・まだ分からない、と。そして朝霧は、
「音大に行きたい」
と言い切った。この間の演奏もそうだったけど、少し会わない間に、彼の中で何かが変わったようだった。