すると殿下が、週末にテニス大会を開く、とおっしゃった。どうもみんなストレスがたまっていて、仕事の能率が上がらない、と。楽しみだ!
それはさておき、最近、上柳さんの笑顔を見ていない・・・。
そう思った僕は、電話をかけた。
“正直言って、沙紀のことはショックだよ。ちょっといいかも、なんて言っていた相手から、うまい具合に告白されるなんてことがあってもいいの?”
僕も事情を聞いて驚いた。由利くんというのは朝霧とはまるでタイプが違う。ほんの少し前に、告白するくらい好きだったのに、そう簡単に心変わりしたりするものなのかな?しかも体育会系の男を好きになる?
「ありえないと思っていたことでも急に起こったりするのが、この世の中なんだよ。何があってもおかしくない」
“そうだよね。沙紀は、私がボロボロの時にも支えてくれたから私も応援してあげたいと思うけど、毎日楽しそうにしているのが許せない、と思うときもある。・・・そこまでいかなくても、羨ましいよ”
「きっと、これからも素敵な出逢いがあるよ、きっと。所詮他人は他人なんだから、自分だけの幸せを見つけることを考えて」
・・・上柳さんが黙った。・・・彼女に幸せを与えられるのは僕なのに、こんな言い方をされると辛いだろうと思う。でもしょうがない。
“沢渡くんは、彼女と順調?”
「・・・順調だと思うよ」
“でも私に優しくしてくれるようになったよね・・・どうして?”
どうしてかな?
「責任を感じているところがあるから。・・・僕に出来ることは、友達として支えてあげること。そう思っているだけ」
“じゃあ、私がもっと傷ついたら、もっと優しくしてくれるの?”
「物騒なことを考えないでよ!それに、僕までその相手に恨まれるのはもうたくさんだ」
“ごめんなさい・・・、今のは言葉のあやだから。本当に、沢渡くんがついていてくれるというだけで心強いの。だから生きていける・・・”
あまり変なことは考えないで。・・・夜だから、そんなことを考えたんだよね?