3日も休めば十分だ。
とはいえ無理は禁物なので、書類の整理くらいだけど。
「何やってるんだよ」
そこへ響が入ってきて、机の前に立ちはだかった。
「まだドクターから許可が出たわけではないそうじゃないか。部屋に戻りなさい」
「心配してくれてありがとう。もう大丈夫だから」
にこやかに、そして丁寧に返事をすると、響は机にバンと手をつき・・・咳き込んだ。
「結城に近づいただけでこれだよ。ウイルスを撒き散らさないでくれる?」
・・・おいおい、こんなところでコントをやっている場合かよ。
「だったら、入ってこなければいいだろ。ここは俺の執務室だ」
「そういうわけにはいかない。僕のほうが権限が強いんだからね。・・・これは命令です」
「芝居なら沢渡とやってくれ。俺が大丈夫って言ってるんだから、大丈夫なんだよ。・・・別に外出したりするわけじゃないし、疲れたらソファーで横になるから」
「今後ひどくなっても、お見舞いには行かないよ」
「お前だって、不眠症のことを心配してやってるのに、いつも、大丈夫、って言うじゃないか。お前のほうこそ、権限があるんだったらまずは自分の健康について考えろよ」
響が固まった・・・言い過ぎたかな。
ところが響は急に笑顔になって、俺の額に手を当てた。
「よかった。すっかり元気になったみたいで」
は?・・・試したのか?俺を。
「声も問題ないし、いつもみたいに殺気立ってくれたし、・・・頭は痛くない?」
・・・お前怖すぎ。
「ほら~、心配じゃない。結城がいてくれないと仕事がどうなるか。だから、万全を期してから復帰してもらいたかったんだよ」
そうか、それはありがとう。・・・俺は、今貴重なエネルギーをたくさん使ってしまった気がするよ。
「ねえ、僕も沢渡くんみたいに役者になれるかな?」
あのな、芝居ならきっと、俺のほうがうまいぞ。