12/14 (月) 23:30 世の中のバランス

先週から部活は試験休みに入っていたので、ちょうど結城のお見舞いに行くにはもってこいだった。今日からは仕事にも完全復帰しているそうで、よかった。

しかし学校ではまたまた問題発生。・・・上柳さんと沙紀ちゃんの仲がよくないみたいで、それぞれ違う友達と一緒にいる。・・・ああ、女の子はどうしてこうも難しいのだろう。でも以前決めたように、わざわざ仲を取り持とうとしたりすると、こっちにまで火の粉がかかるから、接触は最低限に。

昨夜殿下にもおっしゃっていただいたけど、もうすぐ僕の誕生日だ。今年は有紗さんという素敵な恋人ができたから、きっと今までで一番幸せな誕生日になるはず。楽しみだ。

でもその前に、明日から試験だから、とりあえず勉強をしなければ。となると、やってくるのは朝霧。

「言っておくけど、今回はお前のほうが有利なはずだからな」

いくつか曖昧なところがあったから、先生に聞きに行ってしまったじゃないか。

「授業時間ではそうかもしれないけれど、能力の面では絶対に僕のほうが不利だ」

「それはやる気の問題じゃないのか?暗記なんて努力の差だろ?そうしようと思わないお前が悪い」

「違うね!君の場合はパッと見ただけですぐに何でも覚えられるみたいだけど、普通はそうはいかないんだよ!自分はとても恵まれているってことをもっと自覚してよね」

「楽譜だったらすぐに暗譜できるくせに、どうしてそういうことを言うわけ?」

それはその・・・、とひるんだところを見ると、やっぱりそうなんじゃないか。

「でもそれとは別に、数学は本当に頭に入っていかないの。どうにかしてよ」

どうにかして、と言われても、どうすることも出来ないよ。でも、

「ちゃんと質問には答えてあげるから。・・・ほら、何からするんだよ」

僕も僕で、朝霧を放っておくことは出来ないので、教えてあげる。

世の中、うまくバランスが取れていると思う。自宅の生活はあまり楽しいとは言えないけれど、代わりに宮殿での生活がある。頭が固くて融通が利かない僕のために、殿下がいらっしゃる。まだ子どもっぽい僕のために、結城が大人の男というものを教えてくれる。朝霧は僕の力を必要とし、僕は朝霧の演奏で癒される。有紗さんは僕の隙間を埋めてくれる。

・・・だとしたら、僕は上柳さんに何かしてあげるべきではないのかな?僕は彼女のことを傷つけてばかりいる。なのに彼女は、僕に接しようと努力を重ねてくる。・・・心苦しい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です