一日目は無事に終了・・・と思いきや、
「もうすぐ沢渡くんの誕生日なんだって?」
と上柳さんが言い出したから、また複雑な心境になってしまった。・・・すると、たかが玄関まで一緒に歩くだけなのに、妙に周囲から見られているような気になってしまう。
「うん、でも別に特別なことはしないよ」
「ウソ~。・・・それは彼女とゆっくり過ごしたいからだよね」
・・・その一言に、何かが弾けた。
「ねえ、僕に何を言わせたいわけ?」
すると、彼女の顔から、血の気が引いていくのが分かった。
「別にそんなつもりじゃないのよ。ただ、一般論的に・・・」
「僕は、他人を詮索するような人間は好きじゃない。君と、友達以上の付き合いをするつもりはないから」
言ってしまった。・・・しかしもう遅い。このまま立ち去るのみだ。
「あんなことを言ってしまって大丈夫?」
車に乗り込んでから、朝霧が心配そうに聞いてきた。・・・よくないだろうね。言葉がどうこうじゃない、公共の廊下という場所が悪かった。周りの女の子たちはビックリしたような目で見ていたし、男子たちも好奇の目を投げかけてきた。何だかんだ言って、また僕はネタを提供してしまったみたいだ。
でも、今更上柳さんに謝ってもしょうがない。いい機会だった、と思うことにしなければ。