僕は昨夜のうちに決心を固めていた。誰からも何ももらわない、と。でもそう思ったからなのかどうなのか?誰からも声をかけられないまま放課後になってしまい、もうこのままさっさと帰ることにした。
「朝霧、早く帰ろう」
「沢渡くん!」
よし、と思ったのも束の間、クラスの女子に呼び止められた。
「今日、お誕生日なんだって?・・・おめでとう」
と差し出されたのは、手作り風の小さな箱。・・・このくらいだったらいいかな?でも、公平を期するためにはすべて断らないと。
「ありがとう。でも、気持ちだけ受け取っておくよ。それで十分だから」
そんな~、との声が上がる間に、次の女の子がやってきた。
「別に深い意味はないの。単純にお祝いの気持ちだけだから、もらってくれてもいいじゃない」
そう言われても・・・。
「ね、いいでしょ」
そして、勝手に袋を持たされていた。・・・そうなると、1個もたくさんも同じだ。次から次へと女の子がやってきて、両手に大荷物。
更に玄関まで行く間に、朝霧まで両手に荷物になってしまい、上級生からも大いに視線を集めてしまった。・・・またしてもネタを提供してしまったみたい。
「沢渡」
うわっ。・・・こんな時に兼古先輩。
「こんにちは」
「凄いな、それ。実は毒針とか毒薬が仕込まれていたりして?」
怖いこと言わないでくださいよ。・・・でも、ひょいと朝霧の荷物を持ってくれたのはさすが。さっきから気になってしょうがなかったんだ。そして車のところまで送ってくれた。
「俺からのプレゼントはこれ」
…観葉植物?先輩ってこんな趣味でしたっけ?受け取って車に乗り込む。
「沢渡さん、凄いですね、それ」
「お菓子はみんなで食べてくれる?」
仕官のみなさんへの差し入れにしよう。