「今月は、表現力を高めてもらうために創作ダンスの先生をお呼びしました」
・・・相変わらず、部長の発想は面白い。でも言葉ではなく身体で表現するというのは難しい。それは朝霧にとってもそうで、すっかり憂鬱そうな表情になっている。
「今週いっぱいはあれこれ身体を動かしてもらい、来週発表の場を設けます。一人でもグループでも、どちらでも構いません。自由に相談して決めてください」
どうしようか・・・も何も、僕はダンスなどやったことがないのだから、見当がつかない。・・・あれ、上柳さんと沙紀ちゃんが話している。・・・ということは、転校のことも話したのかな?
僕は上柳さんのために何かをしてあげたいと思っている。最後の思い出作りに、そして、今までの罪滅ぼしに。
今日の上柳さんはにこやかな表情だ。一つ大きな決心をしたおかげで、吹っ切れたのかな。
「沢渡、ちょっと・・・」
兼古先輩と部長が呼んでいる。・・・きっと上柳さんのことだ。
「転校するって本当なのか?」
部長たちには、来月の配役の都合上、伝えることにしたみたいだ。でも、他の人はまだ知らないみたい。・・・そこで、昨日の出来事を話した。
「どうしようもありませんね。僕にできることなんて何もなくて・・・」
「そうだな。でも、しょうがない、で片付けるにはあまりにも事が重大すぎないか」
「沢渡くんはいつも通りにしているしかないわよ。今更同情されるような態度をとられても、辛いだけだわ」
「でも、もう今後会うこともなくなってしまうのかと思うと、申し訳なくて・・・」
「でも二人きりで何かすることはないと思うわ」
部長ははっきりと言い切った。
「部活でお別れ会をする、それで十分でしょう」
そうですか?・・・きっと、彼女が転校することが知れたら、僕のせいだという考えがみんなの中に浮かぶに違いない。先日もあんなことがあったし・・・、でもそれも、自業自得か。こればかりはしょうがない。