実は殿下から、素晴らしい誕生日プレゼントをいただけることになってしまった。春になったら僕は今より広い部屋をいただけることになっているのだけど、なんと、その部屋にふさわしいグランドピアノをプレゼントしてくださるとのこと。さすがにこればかりは丁重に断らせていただこうと思ったのだけど、結城も一部援助してくれていると言うし、何よりも、先方の国とはもう話をつけてあるから、なんて言われてしまうと断るすべがない。・・・その代わり、殿下のリクエストにはいつだってお応えしようと思っているけど。
そしてもう一つ言われているのは、部屋の内装のリクエストがあれば伝えるように、とのこと。とりあえずはシンプルな部屋がいいと思っていて、兄貴にも相談に乗ってもらっているのだけど、どうも決まらない。
・・・結城の部屋でも、改めて見学してこようかな?
結城の部屋は、玄関ホールにターボリフトの乗り場がある。ここには結城が許可した人だけが出られるようになっていて、当然ながら僕もここに出てくる。そしてそこで靴を脱ぎ、自動ドアから部屋に入る。
結城の好きな色は黒。照明もいつも落としてあり、落ち着いた雰囲気。入ってすぐはリビングになっていて、濃いグレーのカーペットに黒のレザーのソファーセットが置かれている。そしてガラスのテーブル。
「何か用か?」
「部屋のインテリアを決める参考にしようと思って」
結城はあまり広い部屋は要らないと言って、ずっと今の部屋に住んでいる。ソファーに座って巨大なモニターで映画を観ていられれば、それで満足なのだ。
サイドボードには数多くの酒の瓶、そしてグラス。隣接するキッチンは、ほとんど冷蔵庫しか使っていない。ちなみにこちらも黒。
そしてベッドルームに行くと、とてつもなく巨大なベッドが置かれている。・・・昔はここで一緒に寝ていた。でも今寝てもお互いの邪魔にはならないくらい、余裕のあるベッドだ。ボックスシーツはグレー、上掛けのカバーは黒。そして部屋の片隅には机があり、その上にパソコンが置かれている。でも本はあまり置いていなくて、何冊か机に立てかけてあるだけ。
その隣はウォークインクローゼット、そしてバストイレ。ここもまた濃いグレーだけど、結城は基本的にシャワーしか使わない。浴槽横にシャワーブースがあって、いつもそこに入っている。
極めて実用的なのが結城の部屋。無駄なものは置かない、置くとしても徹底して隠す収納。これは僕的にもかなり気に入っているので、参考にしたい。
「でもあんまり真似するなよ」
そう言われてもね・・・。