12/24 (木) 23:30 思いやりの言葉のはずが・・・

さすが村野さんはやることが早い。早速チケットを手配してくれて、みんなで観に行くことになった。・・・けど、周りの雰囲気がおかしい。どうも、上柳さんと僕を二人きりにさせたがっているような感じ。いいですよ、こうなったら。

そして僕たちは、みんなのあとを二人で歩いていた。

「クラスのみんなには言わないつもりなの?」

明日は終業式。でもクラスメートには言っていないし、演劇部の大半も知らない。

「うん・・・黙って消えることにした。・・・そのくらいのわがままは許して」

それは覚悟している。僕のせいだと言われてもしょうがない。

「これからどうするの?」

「留学することにした。首都を離れるのは嫌だったし、だったら外国しかないでしょ。・・・親も世間体を気にするし」

そうだ、クリウスみたいな名門に比べると、どの学校もランクは落ちるだろう。それだけに、辞めるなんて決心をさせた僕の罪は重い。

「でもまだ1週間あるし、部活ではいい思い出を作っていってほしいな。出来る限りのことはするから・・・」

・・・あ、上柳さんが立ち止まった。

「もう、沢渡くんって、優しいの、冷たいのどっちよ!それに気づかないなんて、残酷だわ」

僕は決して怒らせようとしているのではなく、むしろ喜んでもらおうと思っているんだけど。

「沢渡くんは、片想いの辛さを少しでも考えたことがある?こんなにも・・・こんなにも好きなのに、報われないんだよ。・・・この気持ちが分かる?」

考えようとはしているけれど・・・、分かろうとしてきたけど・・・。

「僕だって、上柳さんのことが好きだったらどんなにいいかって何度も思ったよ。・・・でも自分の気持ちに嘘はつけない。・・・君もそうだったんだよね」

・・・その場で彼女はしゃがみこんで、泣き始めてしまった。先を歩いていた3人が振り返る。

「ごめん」

それ以上に何か言うと、またおかしくなりそうだった。・・・今は、抱きしめて泣き止むのを待つしかない。

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