「ねえ、また悩み事?」
どうして僕は役者になりきれないんだろう。・・・実は向いていないのかな?でもこのままでは悔しい。
「部屋の間取りとインテリアで悩んでいるんですよ。何かリクエストはありますか?・・・というか、有紗さんの部屋を見せていただきたいんですけど」
「それはダメね」
・・・速攻却下ですか。
「でもリクエストはあるわ。あまり生活感がないほうがいい。・・・希も、そういうのが好きでしょ?」
そうですけど・・・どうして?
「そのほうが、ドラマティックじゃない?私たちは特別という感じで」
・・・それは、今でも感じていますよ。陛下の娘との秘密のデート。・・・それを、僕のほうももっと演出してあげなければならないということかな?
「だって、希は今に出世するわけだから、そうなると立場も変わってしまうのよ。私はしがない秘書、でもあなたは国王陛下」
そんなの、随分先のことです。僕のほうが付き合っていただいているんですよ。
「有紗さんは辛い恋をしたことがありますか?」
「辛い恋?」
「叶わない恋・・・とか」
そうね~、と首を傾げる。
「叶わない恋ほど燃えるものよ。何とかして振り向かせたい、と思ってしまうの。・・・所詮無理なのにね」
「有紗さんでも?」
「希は思われるほうだから、分からないでしょうけどね」
「そんなことありません。今の僕は、有紗さんに嫌われないように、精一杯愛を捧げているところです」
嫌われないように?と有紗さんが聞き返した。
「希は、私のことを好きではないの?」
いえ、そんなわけは!・・・すると有紗さんは半ば呆れたように僕を見た。
「私は希の気持ちが分かるけど、政治家は言葉を慎重に選ぶべきよ。誤解を招くような発言はいけないわ」
・・・またやってしまった。