飛行機に乗り少し眠ったあとは、急に現実に引き戻された気がした。・・・皇太子の顔を作っておかないと。でもまだ飛行機に乗っている間は、そのことを忘れていたい。
・・・ふと見ると、モーリスからメールが届いていた。
“僕も、彼女とのことを占ってもらった。そしたら、彼女とはやはり相性がよくないとのことだったから、きっぱり諦める。もっと素敵な女性を見つけることにするよ”
・・・何だ、それは?占いで判断されたから、その仕返し?・・・やっぱり、モーリスはまだ大人になりきれていないみたいだ。
「貴くんは、占いを信じないの?」
「うん。占いを聞いたばかりに振り回されるのはごめんだよ。僕は悲劇の主人公になんかなりたくない。それに、舞との相性なんて、今更占ってもらわなくてもいいに決まっているからね」
舞は、それを聞くとにっこり微笑んだ。
「でも、できれば困難は避けたいと思わない?」
「それはそうだけど、人は困難を乗り越えることで成長するんだ。その時は辛いかもしれないけれど、・・・今となっては、舞がいてくれるから怖いものなんてない」
「貴くんは自信家ね。・・・いつも飄々としているのに、いざというときははっきりした行動に出る。・・・ひょっとして普段の貴くんは、カムフラージュのため?」
バカだね、僕だっていつもかも気を張り詰めていると疲れてしまうじゃないか。これから議会が始まってまた忙しくなる、それに舞がお妃教育を始めると・・・しまった。
「全然打ち合わせしなかったね」
モーリスのことでかなり気を取られてしまっていたし、休みに入ると、どうも次の日に先延ばしにしてしまうから・・・。
「いいわよ別に。結婚式を延ばせばいいだけなんでしょ?」
・・・さては、拗ねた、か。
「そんなわけにはいかない。舞には仕事を辞めてもらうことになるんだから、そのあとの面倒はきちんと見るよ。・・・そうだ、校長先生には挨拶に伺うよ。そのほうが気が楽になるよね」
「ダメ、そんなことしなくていいわ。・・・だって、保護者の目は厳しいのよ。誰かに話したら、情報が漏れるかもしれない。だから、誰にも言わなくていいの」
舞がいいって言うのなら、そうするけど。・・・何だかこの休暇は、モーリスのためのものだったみたいだ。おかげで退屈はしなかったけど、舞とゆっくりするはずが・・・。ま、これからいくらでも機会があるから、そのときにしようか。