そういうわけで、今日も兼古先輩と外出。
先輩は遊び心が旺盛で、制服のまま街を歩いてみようなんて言い出した。そうしたら、街の人が振り返ること、振り返ること。・・・というのも、クリウスの学生は大体車で移動するので、その制服が街中で見られるのは珍しいからだ。
「悔しいな、お前のことを見ている人が多い」
「そんなの、すれ違うだけでは一瞬過ぎて分からないじゃないですか」
「意外と、お前の目は節穴なんだな」
「一生懸命先輩のことをフォローしているんですから、言葉通り受け取らないでくださいよ」
言うと、先輩は爆笑して僕の肩を叩いた。
「お前って最高。アイツでなくても、かわいがりたくなるよな~」
・・・今のところ、周りに年上の人が多いせいもあり、年下から慕われたことがない。でも、年上の人からかわいがっていただけることに悪い気はしない。
「でも大丈夫なんですか?折角仲直りしたのに、僕とばかり会っていても」
「・・・お前はいいって言ってくれただろ?」
「だからって、毎日だとは思わないでしょう、普通。これじゃあ、怪しい二人ですよ」
「沢渡とだったら、噂になってもいいかな?」
そういうことを言わないでください、お願いですから。
「でも、今までの俺って、あまりにも美智と一緒にいすぎた気がするんだ。だって、彼女と一緒にいるだけが能じゃないだろう?折角の高校生活だし、俺は生徒会長でもあるから、もっと人と人とのつながりを大事にしたほうがいいと思って」
それはいいことだと思いますが、贅沢な悩みに聞こえますよ。・・・でも僕も、時々しか会えないことがいいのかもしれないと思っている。だって、部屋に帰ればすることがたくさんあるし、いつも誰かが一緒にいるというのは困るに違いない。それに今でも、一人でいる時間は絶対に必要だと思っているし。
「・・・女の人は、それでも許してくれるんでしょうか?」
う~ん、と先輩は考える。
「それは人によりけりなんじゃないか。・・・美智は分かってくれると信じているけど、どうだろう?」
「そのとばっちりを受けるのは嫌ですよ」
先輩はまたまた爆笑。
「大丈夫。俺は、美智に飽きたわけでも、ましてや嫌いになったわけでも何でもないから」