「沢渡くん、ちょっと話があるんだけど・・・」
何やら思いつめた表情で、部長が僕に話しかけてくる。・・・昼食すらも一緒にとらないんですね。
今、学食。朝霧と一緒にいたところに、部長が自分のプレートを持ってやってきた。ほら、言わんこっちゃない。
「祐輔は一体どうなっちゃってるの?何か言ってない?」
もう、兼古先輩。僕とデートするのはいいですけど、事情をきちんと話してからにしてくださいよね。
「僕の口からは言えません。・・・ほら現に今も、兼古先輩がずっとこっちを見ていますよ」
部長が僕の視線の先を追うと、兼古先輩はにこやかに手を振っていた。
「何なのよ、あれは・・・」
・・・部長がかわいそう。
「兼古先輩は変化を求めているんですよ。別に部長のことが嫌いになったわけでも何でもなくて、生徒会長としての役割を考えたら、いろんな人と接するのが得策だと考えたんだそうです」
「そんなこと、私には全然言わなかった・・・」
でも、僕は僕なりに、先輩のことを見ていて気になっていたことがある。
「部長はちゃんと、兼古先輩の話を聞いてあげていますか?」
えっ?と、それはそれは驚いたように目が見開かれた。・・・そう、いつ見ても部長が話しかけている。兼古先輩は、生徒会長を務めていることからも分かるように、社交的でよくしゃべる人だ。なのに部長といると、それを全部相手に譲ってしまうのだ。
「沢渡くんの言う通りだわ。私は我が強すぎるのかしら・・・」
「でも、部長がそんな風に動揺しているところを見ると、兼古先輩はとても喜ぶと思いますから、あんまりそんな顔を見せないほうがいいですよ」
「もう、沢渡くんはっ!」
・・・見ていると、今度は泣きそうな顔になってきた。ヤバイ。
「まったく、祐輔はなんて大人気ないのかしら。そうならそうと私に言ってくれればいいのに・・・。ごめんね、沢渡くんにまで迷惑をかけて」
はい。まさかこんなことになろうとは・・・。
「でも一つだけお願いを聞いて。今夜は私とデートしましょう」
・・・どうしてそうなるんですか。