1/20(水) 17:00 信用

今日は議会に外賓がいらしているので、女性として扱われている。

“素敵な女性にお出迎えいただけて光栄です。さぞこの国も美しいのでしょう”

“はい、ご滞在中には我が国の美しい場所にご案内いたしますので、どうぞゆっくりなさっていってください”

相手の方は礼儀として、私に男としての眼をお向けになる。でもそれが度を過ぎると、いつも殿下がやんわりとそれを断ち切ってくださる。

殿下にはいたるところにご友人がいらして、どの方とも親しそうに会話をなさっている。なのに私には・・・お客さまがいらっしゃると、まずは私に話しかけてくださるのにもかかわらず、挨拶以上の会話ができるような人がいない。しかも、男性ならまだしも、女性の場合は私のことを値踏みするような視線でしばらく見て、それでおしまい。どうしてこうも違うのか・・・。

所詮私は、陛下の娘として見られているに過ぎない人間なのだ。その肩書きがなくなれば、私なんてただの人。

「どうかしました?有紗さん」

そんな時、殿下が優しい言葉を掛けてくださったので、私は泣きたい気分になってしまった。・・・その場では何とかこらえたけれど。

そして殿下は、軽食に誘ってくださった。

「意地を張りすぎているんじゃないですか?沢渡くんに会いに行けばいいのに・・・」

・・・いきなりそんなことを言わないでください。

「だってそうですよね。何のための恋人なんですか。きっと彼なら、その苦しみを軽くしてくれると思いますよ」

「それは分かっています。分かっていますけど・・・」

その先がうまく言葉にならない。いきなりそんなことを言われたせいで身体は熱くなるし、でも気持ち的には怖気づいてしまうしで最悪。

「僕だっていろんなストレスがたまりますよ。でも、それを発散させて自分をうまくコントロールすることも仕事の一つじゃないですか?・・・折角安らげる場所を見つけたわけですから、活用しないと・・・信用を失うことにもなりかねませんよ」

そんな・・・殿下・・・。希の胸を借りることが、希の信用を得ることなんですか?

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