1/23 (土) 23:30 感触

「有紗さんがいるって分かっていても、ドキドキしてしまうんですよね」

希はかわいいことを言ってくれる。・・・そう、昨日会ったときも、内心は嬉しかったけど努めて冷静を装っていた、と。

「別にいいのよ、誰もいなければ」

「それはダメですよ。どこで誰が見ているか分かりませんし、一旦崩れた顔をまた戻すのは大変ですから」

・・・そっか、希は律儀なのね。・・・それは嬉しいようでつまらない。

「あのあと、陛下がおっしゃったわ。“沢渡くんは年下過ぎる”と。もし私たちのことがバレたらどうなさるかしら?」

そう言うと、希はしばらく黙り込んだ。

「僕は別に、バレても構わないんですよ。ただそれでは、有紗さんに迷惑がかかると思い、控えているのです」

・・・その真剣な眼差しに吸い込まれそうになる。

「随分自信がついたようね」

「僕のことを大人の男として認めてくれますか?」

そうね・・・、今の希ならいいかしら?

「でもあなたはまだ結婚できないわ。その意味からいくとまだ子どもね」

「はぐらかさないでください」

更に希は、精神的に私を追い詰める。・・・迫力が出てきた。

「昨日の有紗さんの様子が心配だったんですよ。声を掛けたかったんですけど、余計に動揺させてしまうんじゃないかと思って、見なかったフリをしたのです。・・・あれからどんなに気になっていたことか」

顔が崩れる・・・というのは私のことだったの?ちゃんと気づいてくれていたのね。

「希・・・」

すると彼は、長い腕で私のことを包み込んでくれた。・・・ほしかったのはこの温もり。

「もっと僕のことを信用してくださいよ。緊急事態のときには呼んでください」

信用という言葉が希からも・・・、でも、殿下から聞いたわけではなさそうだった。殿下が軽々しく話されたりするはずがない。

「そうね。これからはそうするわ。希に抱きしめてもらえるだけで解決するなら、何日も悩んだりするのはバカみたいね。その間に老けてしまうわ」

「有紗さんにはいつまでも綺麗でいてほしい・・・」

そしてキス・・・。今夜は希に話してもいいかな、と思った。

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