部活がないため、そのまま美智の家に立ち寄ることになった。
「祐輔は試験勉強をしていいわよ。編集は私がやっておくから」
くぅ~、癪に障る言い方。
「でも、俺にだって観る権利はあるだろ?自分の演技を客観的に観ることは大事じゃないか」
「・・・完成版でもいいんじゃないの?」
・・・これは単なる嫌味だから、そのまま受け取らないことにする。・・・美智にもそれが分かっている。
作品を観ながら思ったこととしては、
「これは、新入生歓迎会でウケそうだな」
「それは言えてる。私もそうしようと考えていたところよ。・・・今の部には、ヒロインになれるような女の子がいないじゃない。だから、祐輔と沢渡くんというクリウスの2大アイドルに活躍してもらえると、女の子の入部希望者が増えるんじゃないかと思うわ」
・・・上柳さんといういい女優がいなくなったことは、部としては痛い。コンクール向けの作品にはあまり恋愛をテーマにしないほうがいいが、それにしても男女のバランスがうまく取れないのだ。
「しかし、この沢渡の艶っぽさは何だ?・・・いつにも増してって感じじゃないか」
これでは、男まで変な気を起こして入部してきそうだ。
「きっと、何かいいことがあったのよ。最近沢渡くん、ご機嫌だもん」
「そうか?」
「そうよ。祐輔は役に没頭していたから分からないかもしれないけれど、確実に何かあったわよ。ねえ、これを見て」
美智がパソコンを操って、そのシーンを見せてくれる。・・・沢渡が一人で荒れ狂うシーンだ。そこで、ほんの一瞬だけど・・・一時停止にすると、ネックチェーンの先に指輪がついているのが見えた。
「凄くいい指輪よ。彼女からのプレゼント?」
「すると相手は相当リッチということになるぞ」
「少なくとも、クリウスの女の子じゃ太刀打ちできないくらい、の人よ。かなり年上ということになる」
それじゃ、上柳さんも敵わないな。あの沢渡をもっとイイ男にさせる女の人とはどんな人か・・・実に気になる。