「沢渡くんは幸せなわけだ。・・・でも、どんな人なんだろうね」
・・・さすがに、写真まで出させるのはマズイと思って控えた分、美智もかなり気になっているらしい。
「お前もデートしてもらったんだろ?どんな感じだった?」
そうなのよね~、と美智は首を傾げながら思い出している様子。
「私と一緒にいても、全然気にしている感じではなかったわよ。だって普通は、彼女にバレたらどうしようって思うものじゃないの?」
確かに。
「それから、とても紳士的だったわよ。私のほうが先輩だからって断ったんだけど、見たこともないカードで全部払ってくれた。何だか違う文字で、サラサラ~ってサインを書いていたわよ」
何だそれ?・・・でも詮索してはならない。そのおかげで望月先輩と険悪な雰囲気になったのだから。
一方俺とのデートのときは、俺を立ててくれたのだろう、全部俺に任せてくれた。アイツが女の子だったらどんなによかったことか、と思うほど、居心地がよかったのは確かだ。
でもそんな身辺を気にするのはやめにして、
「こんなに情報が飛び交うクリウスでも、沢渡の彼女の情報は皆無だ。でも付き合っているのは事実・・・」
「そうね、フラれたという話はよく聞くわよ。でも、沢渡くんって、私たちの前ではにこやかだけど、クラスでは最近ガードが固いみたい。やっぱり、上柳さんとのことがあったからじゃない?みんなとも距離を置いているみたいなのよ」
「沢渡なりの防衛手段なんじゃないか?だって、好きでもない子から告白されるのって結構辛いもんだよ」
へえ~、祐輔にもそんなことがあるのね、といった様子で、美智の目が見開かれる。
「それだけじゃない。相変わらず身の回りのことを探られるのも嫌がるだろ?この間もそうだよ、一緒に歩いていたら、雑誌社の人から写真を撮らせてほしいって言われたんだよ。でもアイツは“写真は困ります”って、失礼がないようにだけどしっかり断っていた。・・・俺でも知ってる有名な雑誌だったのに」
ふ~ん、と美智はモニターの中の沢渡を見ながら考えていた。
「相手によって態度が全然違うのね。謎なのが沢渡くんの魅力ってことか」
「嫌われたくなかったら、根掘り葉掘り聞くなってことだよ。沢渡だけでない、朝霧にも、だ」
強いて言えば、いつも一緒にいる朝霧が、彼女のようでありボディーガードのようでもある。