定例の土曜夕食会は・・・。
「何だよお前、妙に意識しやがって」
結城はいつもの様子を全く崩さないので、ついにはバカバカしくなって来ていた。一人悩んでいた僕は一体なんだったんだ。
「言っておくけど、あれはやりすぎだよ。そこまでしてもらわなくても・・・大丈夫だから」
僕はいつまでも子どもじゃないんだ。・・・しかしチラッと結城を見ると、顔色一つ変えずスープを口に運び続けている。まったくもう。
「別に気にするなよ。お前の場合、話を聞いてやったところですぐには落ち着かないから、寝かせてしまうのが一番だと思ったんだ。…俺だって早く寝たかったしな」
そこまで淡々と述べられると、僕の立場というものが…。
「別にお前が感じようが感じまいがどちらでもよかったが・・・、俺としては光栄だったかな」
だから!そういうこと言わないでくれる!・・・思い出すだけでも恥ずかしい。・・・そしてほら、僕の反応を見て楽しんでいるでしょ。
「だったら聞くけど、望月の前で泣いたのと、俺にキスされたの、どっちが屈辱的だった?」
それはやっぱり先輩のほう・・・かな。実は聞かれるまで先輩のことは忘れていた。
「まあ、この期に及んでお前がこんなに動揺するなんて思っていなかったから、その点は悪かったかもしれない。でも、俺だって誰にでもあんなことをするわけじゃない。お前のことが心配だったから、ああしたほうがいいと思ってしただけだ。今更、下心があるんじゃないかなんて、変な勘繰りをするのはやめてくれよ。お前とは何年も同じベッドで寝た仲だし、何回か風呂に入れてやったこともあるんだ、キスくらい許してくれよな」
キスくらいって・・・、あんなキスが、くらい、で片づけられてたまるかって。でも、結城の言うことも分かる。確かにあの夜、僕は眠れそうになかった。なのに熟睡させてくれたことは感謝しなければならないかも。・・・実際、僕はあの時、悪い気はしなかった。結城に抱きしめられると、落ち着くんだ・・・。
「ほら、俺がこんなに謝っているんだから、何とか言えよ。・・・料理も冷めてしまうだろ」
「分かった。今回のことは水に流す。でも今後は、舌を使わないこと。いいね!」
「はいはい、分かりましたよ。そんなに怒ると、お前の美貌が台無しだぞ・・・って言うか、俺に感謝の言葉はないわけ?」
「先輩のことを忘れさせてもらえた、そのことには礼を言うよ。・・・ありがとう」
よしよし、と、結城は満足げにフォークを口に運んだ。
「でも、過ぎたるは及ばざるが如し、という言葉は忘れないように!」
・・・あぁ、面白くない。