このままではいけない、いけないと思いつつ、思えば思うほど気持ちが焦って情緒不安定になる。
「どうしたの?昨日からずっと変だよ。大丈夫?」
朝霧の目には僕が相当奇妙に映っていることだろう。でもこんなことを相談するわけには・・・。でもこのままでは何も解決しない・・・。他に相談できる人は殿下・・・だけど、仕事の邪魔をしてはいけないし・・・そうか、加藤だ。加藤も絶対、気にしているに違いないし。
そして夜、部屋まで送り届けてくれたついでに、一緒にお茶を飲もう、と声をかけてみた。・・・でも気まずいなあ。もちろん加藤は、いつものように自分から言葉を発するわけではなく、表情を崩さず座っているが。
「ねえ、結城と僕との関係って変じゃない?」
恥を忍んで口に出してみたが、加藤はそれでも表情を変えない。
「変とおっしゃいますと?」
・・・加藤のことだから、僕が何か言わない限り返事をしないに決まっている。
仕方がないので、この間の夜のことを話すことにした。・・・あれから僕は押し倒され、キスをされた。するとあっという間に意識を失くし、次の瞬間には結城のベッドで朝を迎えていた、と。
「その夜はぐっすりお休みになれたのですか?」
・・・これが、普段ではありえないほど、ぐっすりと。
「ただし、昨夜は最悪。あのことが気になって全然眠れなかった」
すると加藤は何かに納得したようで、大きく頷いた。
「ならば気になさることはありません。つまり結城さんは、沢渡さんにすべてのことを忘れていただくために、強硬手段に出られたのですよ」
それがあのキス・・・。
「別に不快ではなかったんですよね」
そう。だから、こんなにも動揺しているんじゃないか。
「でしたら、今回のことは少々度が過ぎたようです、とお伝えしておきます。ですが、結城さんも沢渡さんのことを思ってされたことなのですから、感謝なさったほうがよろしいのではありませんか?」
・・・加藤まで、頼むからそんなに冷静に言わないでくれるかな。
「分かった、もういい。自分で言うから、加藤からは何も言わないで」
「かしこまりました」
結局、踊らされるのはいつも僕なんだな。年下は、立場が弱い。