2/7 (日) 23:30 反省

こんなときには有紗さんとも顔を合わせ辛い、と思っていたら、急用が出来て会えないとのことだった。正直ホッとした。・・・しかし会いたいときにはいつでも会うことにしたはずが、逆に気持ちが落ち着いてしまったとかで、結局いつものように土曜日に会うだけにとどまっている。

そして僕はピアノを弾いていた。この一週間は一体何だったのだろう。

兼古先輩は僕のことを心配してくれるいい先輩だ。でも望月先輩は・・・、さっきから考えている。どうして僕が泣いてしまったのか、それは望月先輩には何でも隠さずに話せるという気安さがあったからに違いない。

兼古先輩は、みんなが僕に対して近寄り難いイメージを持っていると言った。それは当然だろう。兼古先輩に限らず、僕はみんなに対してあまりにも多くのことを隠し続けている。だから距離が出来て当然だ。しかも、もっと距離をおきたいと思っている。

僕は別にみんなの素性を詳しく知りたいとは思わない。なのに何故、みんなは僕の素性を知りたがるのか?・・・隠すから知りたくなるのだ、と望月先輩に言われた。でも普通のサラリーマンの息子、では何故いけない?そんな変な詮索がだんだん面倒になり距離を置くようになったのは、ごく自然の流れではないか?だから近寄りがたいと思ったとしても、それは自業自得なのではないか?

ただ、クラス委員を務めている以上、もしクラスのみんなから無視されたりしたら、仕事はやりにくくなるだろう。でも僕は、素性が分からないからといって差別するような風潮自体を排除したい。家柄だけで人を判断するなんて幼稚だ。それを分からせるためにも、しばらくはこれで行くべきだろう。

でも、すべてを話せば気持ちが楽になることは確かだ。・・・自然に話せることがあんなに幸せだなんて知らなかった。その意味では、僕は結城の前では何度も泣いたことがあるし、つかみ合いのケンカをしたことだってある。結城は僕にとってかけがえのない人だ。でも、経緯はともかく僕の素性を知られているからといって、何でも気安く先輩に話したのは軽率だったと思う。結城の前で自分をさらけ出すことが出来るのは、結城のことを尊敬し信頼しているからだ。・・・でも望月先輩は違う。

今後は、そんなに簡単に自分を見せたりしないようにしなければならない。結城のキスで動揺したのだって、元を正せば僕が結城を頼ってしまったからだった。あの日望月先輩の前で泣かなければ、そして部屋に行かなければ、あんなことにはならなかった。同じ過ちは繰り返すまい・・・。

もっと強くなりたい。他人から心配してもらわなくても済むような人間になりたい。

僕はその思いを鍵盤にぶつける。ピアノがあれば、感情は大体コントロールできる。他人には聴かせられない演奏だけど・・・ピアノには気の毒だけど、気持ちを落ち着けるために、出来れば毎日ピアノに向かいたいと思う。

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