2/10 (水) 23:30 執務室にて

「まだここにいたのか」

・・・ああ、こんな時間。さすがに疲れも感じられるようになって来た。外国とのやり取りには時差がつきもので、となると、時間の感覚もだんだんおかしくなってくる。

でも、今日はまだマシなほうだったかな?昨日よりは話が前に進んだと思う。

「今もまた連絡待ちなんだよ。部屋に帰ったところでまたすぐに呼び出されるくらいなら、ここにいるほうがいいと思って」

「食事はとったのか?」

「さっき、軽く。・・・大丈夫だって。まだまだ余裕はあるよ」

そうか、と言いながら、結城は執務室のソファーに座り、内線で竹内にグレープフルーツジュースを2つ頼んだ。

本当は一昨日からほとんど寝ていないけれど、今はそれどころではないし、そんな気分にもなれない。見ると、結城もまた寝ていないような様子だ。

そして僕もソファーに移動して、ジュースを飲む。

「沢渡が騒がしくて困っているよ。もっと何かできることはないか?って。でもそうすれば、学校も休んでもらわなきゃいけなくなるだろ?だから、適当に仕事を割り振ってはみたけれど、まだ納得いかないらしい」

「予算に関して頑張ってもらったから、今回はいいよ。僕の番だ」

「だけど、そこまで責任を感じることないぞ。今のお前は、重量挙げ選手みたいだぞ」

はぁ?どんな例えなんだよ。分かるようで分からない・・・、まあつまり、腕がプルプル震えているのに、必死で持ち上げているということ?

「お前がそんなだから、沢渡もそれに似るんだ。いい手本になるようにな」

「だから、まだ大丈夫だって。・・・僕は結城に慰めてもらわなくてもいいよ。何やら、沢渡くんと濃厚なキスをしたという噂を聞いたけど?」

「何でお前が知ってるんだよ」

「それで、沢渡くんに拒まれたんだって?」

「そうだよ、やりすぎだ、と。・・・こっちこそ大丈夫だ。お前には指一本触れたりしないから」

「当たり前でしょ。結城とそんなことになりたくない」

「お前にはキスしたくならない」

あのね・・・、こんなことを言っている場合?

ほら、電話がかかってきた。仕事だよ、仕事。

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