2/16 (火) 17:30 お願い

由利くんと私は今のところ順調で、明日の放課後もデートをする約束をしている。付き合ってみると彼はとてもいい人で、いつも私のことを心配してくれるのだけど、気持ちを表すのが得意ではないということが分かった。でもそこがまた、かわいいのよね。

「ねえ、部活でのことなんだけど・・・」

迷った末に、彼に話してみることにした。普段あまりしゃべらない上に、機嫌が悪くなると顔まで怖くなる。そうすると手がつけられなくなってしまうから、早めに手を打っておこうと思って。

「由利くんは、コンクールを観に来てくれる?」

あ・・・、目が据わってきた。できるだけ軽い感じで話さないと。

「私も由利くんの試合を見に行ったじゃない?本気で試合に臨んでいる姿は、とてもカッコよかったよ、だから私の本気も観に来てほしいの」

・・・うん、やっぱり無理があったかな。今までのビデオドラマも、あまり快く観てくれているという感じじゃなかった。ましてや、恋愛モノで、私が沢渡くんの彼女役となると、観に来てというほうが難しいか。

「沙紀ちゃんは、平気なのか?」

「・・・本当は平気じゃないよ。でも、沢渡くんから、まだ役に気持ちが入っていないって言われたから・・・ほら、由利くんがそうやって怒っていたりすると、私も後ろめたくなっちゃうでしょ。堂々としていられるためには、もう少し理解がほしいの」

・・・由利くんはまた背を向けて、考え出した。昨日の沢渡くんとは大違い。沢渡くんならクサイセリフもさらっと言ってくれて、しかも王子度が更に上がったりするのだけど、由利くんはそうはいかない。

「沢渡くんはね、由利くんと一度話をしようかなって言っているのよ」

「それはやめてくれ、彼と何を話せばいいんだよ」

「もちろん、私がいないところでって。由利くんがそうやって一人で気を揉んでいても何も解決しない、どころか、悪い方向に進むような気がするのよ。だから、一度話してみて。凄くいい人だから」

・・・まだ決断を渋っているような感じね。そういうところはちょっと嫌かも。

「沙紀ちゃんの頼みならしょうがないね。部活が終わるのが遅いけど、それでもいいなら話を聞いてもいいよ」

「分かった。沢渡くんに知らせておく」

これでいいんだよね。

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