2/15 (月) 17:30 魔力

まゆは今頃どうしているのかな?

試験が終わってから、コンクールに向けての練習が本格的になった。出し物としては10月にビデオドラマの撮影をしたものだから、改めて覚える必要はないけど、ビデオカメラに向かって1シーンごとに演技をするのと、舞台で演技をするのでは大違い・・・何より、まゆがここにいない。だから私がまゆの役を代わりに演じることになって、他にも幾つか細かい変更があったのだけど・・・私にはこの役は難しい。何せ、沢渡くんの彼女役だから。

最初に部長から言われたのは、

「あまり深入りしすぎずに、役者としての演技に取り組んでください。・・・今回は、以前よりももっといい仕上がりにすることができるはずです。頑張っていきましょう」

・・・そう、一番問題になると思うのは、前回役に入り込みすぎて一年生の絆が崩壊寸前にまでいったあの作品を、またやるということ。でも、まゆがいなくなったおかげでやりやすくなったというのが、正直なところ。沢渡くんは相変わらずカッコよくて抜群の演技を見せてくれるから、私はただただその胸に飛び込んでいくだけ。加えて、朝霧くんに対しても、今では遠慮しなくてもよくなった。・・・ただ、沢渡くん、朝霧くんとの関係が、遠く感じてしまうのが困るところで・・・。

「沙紀ちゃん、僕が相手だとやりにくい?」

え?・・・私の演技がまだまだ足りないってことかな?

「何か、沙紀ちゃんを見ていると、技術的にというよりも、気持ち的に僕に向き合ってくれていない気がして・・・」

それは・・・。こんなにカッコイイ人を目の前にしても平静でいなさいっていうほうが難しいって。

「それとも、彼氏に遠慮しているの?」

え~と、それは・・・。

「僕は、このコンクールにすべてを賭けてみたいんだ。だから沙紀ちゃんにも協力してもらいたい。舞台の上では本当の恋人のように見えないと、何の意味もないじゃない?だから、そのためには、僕は何だってするよ」

うわ・・・ドキドキ。最近みんなが言っている「沢渡くんは冷たすぎる」という印象とは全く違って、とても情熱的。・・・特定の人のためにはそうなんだろうね。でも役のためとはいえ、そんなことを言われると・・・まゆの気持ちがよく分かる。だんだんおかしな気分になってくる。

だって、沢渡くんが私だけを見てくれているんだもん。

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