2/20 (土) 17:00 気持ちをつなぎとめる方法

コンクールまであと一週間。私たちカップルの演技はとてもよくなったと、部長から誉めていただいた。そのことはもちろんとても嬉しかったけれど、だんだん沢渡くんを見るのが辛くなってきた。というのは、沢渡くんはあんなことをしておきながらも、平然としているから。

帰り道、村野さんと一緒に喫茶店に入って、話を聞いてもらった。

「どう考えたって、沢渡くんは普通の神経の持ち主じゃないよね。今になって、まゆの気持ちがよく分かった」

特にまゆは沢渡くんが好きだった。だから余計に、演劇のためだけに優しくされたことは辛かったと思う。

「でも今の時期に、やめて、なんて言えないよ。折角今日は部長から誉めてもらったのに、そんなことをしたらみんなにも迷惑をかけちゃうじゃない。それに私だってもちろん、コンクールではいい賞を獲りたいし」

でも、それまで私の神経が持つのかどうか・・・。

「こんな時には、由利くんに会いに行ったほうがいいんじゃないの?沢渡くん以上に愛してもらえば問題ないわけでしょ?」

「・・・でも、由利くんがそんな王子さまタイプに見える?」

がっちりした身体に、無骨な態度。・・・背が高いことは唯一の共通点だけど、印象が違いすぎる。

「王子さまかどうかは私には分からないけど、要は、好きな人から優しくされるってことが大事なんじゃないの?そうやって沢渡くんと比べてしまっているのは、由利くんに失礼だよ」

確かにそれは言えているかも。・・・私は舞台の上で沢渡くんから優しくされながら、これが本当だったらいいのに・・・と思っていた。それってれっきとした浮気?

「うん、明日は由利くんとデートする約束だから、少しはマシになるかな?」

「そうよ、部活も休みなわけだから」

うん・・・。

「でも、部長には伝えてもいい?そうすれば、兼古先輩が沢渡くんに話してくれるんじゃないかと思う。沢渡くんも一生懸命なゆえにやっていることだから、無下にはできないじゃない?でもきっと、部長や兼古先輩なら、うまく解決してくれるはずよ。沢渡くんも、先輩たちの言葉は素直に聞き入れているみたいだし」

そうだよね。・・・以前ほどでないにしても、やっぱりこの作品は私たちを惑わせる。

うまくいくといいんだけど・・・。

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