2/21 (日) 15:30 一言

絶対比べない。私の彼氏は由利くんなのだから。

今日は決めていた。一旦演劇のことは忘れて、素直にデートを楽しもうと。そのほうが、明日からまた新鮮な気持ちで役に入れると思ったから・・・。

私たちはスポーツ物の映画を見て、その後公園のベンチで話していた。

「ひとつ聞いていいかな?」

由利くんが改まった様子で聞く。・・・どうしたの?

「沙紀ちゃんのタイプってどんな人?」

・・・幸いなことに由利くんは、私がほんの少し朝霧くんと付き合っていたことは知らないみたい。でも、ここで由利くんがこんなことを聞いてくるということは、沢渡くんのことを意識しているから、と思ってよさそう。

「まだどんなタイプの人かは分からないよ。・・・って言うのは、カッコイイと思う人が、そのまま彼氏にふさわしいかといえばそうじゃないと思うのよね。付き合って見ないと分からないことだってあるでしょ?」

由利くんは、どうしたものかと困っているような感じだった。

「その点、私は今、とても楽しいよ」

「本当に?」

「本当だよ。逆に由利くんはどうなの?今楽しい?」

「それはもちろんそうだよ」

「よかった、だったら何の問題もないよね」

私は彼の腕にぎゅっとしがみついてみたりする。・・・私には派手な彼氏は似合わない。由利くんと、地味ながらも堅実に行くタイプなのよ、きっと。

「ねえ、無理してない?」

?どうしてそんなことを聞くの?・・・私は驚いて、彼の腕から離れる。

「だって僕は、沢渡くんとはまるで違うタイプだよ。カッコよくないし、成績もよくないし、あんなふうに、はきはきしゃべれないし」

「急にどうしたの?沢渡くんにはちゃんと恋人がいるんだから、私とどうかなったりしないって」

「でも、たかが役のためにそこまで熱くなれるのかな?沢渡くんは僕が知らない沙紀ちゃんのことをいっぱい知ってて・・・、本当の彼氏みたいだった」

ちょっと待ってよ。そんなに卑下しなくても。・・・でも聞き捨てならない言葉が一つあった、「たかが役くらい」って。

そして私は立ち上がった。

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