3/4 (金) 15:00 悩み相談

子どもたちにはまだ、私がこの春で仕事を辞めることは言っていない、というか言わないつもり。どうせ6年生で卒業してしまうので、その時にお別れをすれば済むことだから、私のことで動揺させたくない。それにもし保護者の耳に入れば、もうすぐ辞める先生だから、という目で見られてしまう。となると、仕事がやりにくくなると思うから。

子どもたちの中には、もうすぐ卒業ということで期待に胸を膨らませている子がいれば、みんなと離れ離れになってしまうことを寂しがっている子もいる。

「先生も書いてください」

はい、明日までに書いておくわね。

女の子たちは続々と、サイン帳を書いてほしいと持ってくる。・・・実はこれがなかなか厄介で、趣味とか好きな食べ物とかは問題がないけど、初恋はいつ?とか、今、彼氏はいる?とか、・・・中には、初めてのキスはいつ?とか書いてあるものがあるので、頭を悩ませてしまう。

「先生、少し相談に乗ってもらってもいいですか?」

放課後、教室に最後まで残っていた女の子が、私のところにやってきた。・・・こうなるのを待っていたみたい。

「絶対秘密を守ってくれますか?」

「いいわよ。約束するわ」

「・・・あの、好きな人がいるんです。でも中学校は別々だから今のうちに告白したいんですけど、なかなか勇気が出なくて。・・・それとも、どうせ離れてしまうのだから、告白しないほうがいいですか?」

何せ小学生の相談ごとだから、私の今の価値観で話してもうまく行かない。私が小学生だったときのことを思い出しながら、この子がどうしたいのかを聞き出して答えてあげないと・・・。

「大切なのは、後悔しないようにすること。それもね、してしまったことを後悔するよりも、しなかったことを後悔するほうがずっと後を引くわ。あなたが告白したいと思っているのなら、したほうがいいんじゃないかしら」

う~ん、とうつむいてしまう彼女。・・・実は、同じクラスの男の子のことを好きなのでは?とずっと気になっていたのよね。

「私、先生みたいに綺麗じゃないし、もしフラれちゃったらどうしよう」

「そんなの、してみないと分からないわよ。でももしそうなってしまったら、先生が慰めてあげるから、思い切ってぶつかってきなさい。頑張って」

「はい」

今度は顔をあげてはっきり返事をしたので、私はハグをしてあげた。こういうかわいい悩み相談は素直に応援してあげたくなる。・・・と同時に、絶世の美男子ながら不器用なおかげでかわいい相談をしてくる、某殿下のことも応援してあげたくなる。・・・貴くんに話してしまったら呆れられてしまいそうなほど、初々しい悩みの数々なんだから。

あぁ、この間会ったばかりなのに、もう彼に会いたくなってる。・・・仕事がきちんと終わったらね。

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